諸君、風である!
風博士とは、この私、大風博士のことに他ならない。
しかるに諸君! 諸君は昨今、永田町のあたりに鎮座しては議場を威圧し、凛とした声で毅然たる答弁を打ち出す「高市首相」なる人物の存在を、一体どう説明するつもりであるか!
かつて私と苛烈なる論争を繰り広げた「蛸博士」は、その八本の脚をもって我が風を絡め取ろうとした愚者であった。だが、高市首相は違う。彼女は八本の脚などという生ぬるい生体構造には頼らない。彼女が繰り出すのは、隙のない政策ペーパーの束と、電波波長をも切り裂くごとき鋭い答弁の刃である!
「風博士よ!」
ある日、国会の廊下にてすれ違いざま、高市首相は私を指さしてこう叫んだ。
「実体のない風などというものに、我が国の予算をつけるわけにはいきません! 風とは何か! それは単なる空気の移動であり、安全保障上の実体を持たない非生産的現象であります!」
なんたる不遜! なんたる身も蓋もない正論!
我が偉大なる「風の理論」によれば、国家とは巨大な扇風機であり、政治とは全方向に風を撒き散らす団扇(うちわ)の寄り合いに過ぎないのだ。しかるに彼女は、我が優雅なる風の存在を「非生産的」と切って捨てたのである。
私は怒りに震え、その場で「風の奥義・旋風陣」を巻き起こして見せた。私のマントは翻り、廊下の書類は舞い上がり、永田町全体が我が風の王国と化すはずであった。
だが、高市首相は微動だにしなかった。
彼女は乱れた髪ひとつ手で抑えようとせず、まっすぐに私を見据えて言い放ったのだ。
「風博士、その風力発電のポテンシャルについては、経済安全保障の観点から改めてワーキンググループにて検討いたします!」
……私は吹き飛ばされた。
風を起こしたはずの私が、彼女の放った「圧倒的実務的ロジックの突風」によって吹き飛ばされ、あやうく永田町から多摩川の河川敷まで転がっていきそうになったのである! 恐るべし、高市首相!
しかし諸君、驚く勿れ!
最終的に勝利を収めたのは、やはりこの私、風博士なのだ!
なぜなら、私がヒラリと身をかわして虚空へ消え去った瞬間、彼女の放った鋭利極まる答弁の刃は行き場を失い、永田町の吹き抜けを疾走する「一陣の強い風」となったからである。
見よ! 彼女がどれほど強固な論理を組み立てようとも、言葉を発した瞬間、それは風となって世界へ飛び出していくのだ。つまり、高市首相すらも最後には我が「風」の一部、我が配下の風神と化したのである!
風博士万歳! 答弁の風もまた万歳である!
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