アドルノ
しかし、アドルノがシェーンベルクに与えたのと同じ弁明、つまり「作品において失敗しているのは作曲家ではない。むしろ歴史がその作品そのものを拒むのである」というあの弁明を、アドルノ自身にも差し伸べてやるのが公正であるように思われる。こうした歴史のうちに置かれている以上、アドルノには一つの道を見いだすことなど不可能であった。言いかえれば、われわれのうちの誰かがアドルノによって海に投じられた瓶を拾いあげたとして、果たしてそれがその人に幸運をもたらすか否かを見とどけるのにはまだ手間がかかる、ということなのである。 「アドルノ」岩波現代文庫 p.273~274