日本人への警鐘 「ローマ帝国衰亡史」下巻 訳者解説より (再掲)
ローマ人はもともと質実剛健で、勇武の民でした。建国以来の領土拡大は、そのことを如実に物語っています。また、かれらは多神教であり、宗教的に寛容でした。さらに、人種的偏見も少なかったようです。くわえて、実利的な考え方をしていた民族でした。そのため、かれらの間には、どの民族の出身であれ、優秀な者はこれを活用するという風潮がありました。以上のような民族性により、ローマはしだいに発展、拡大していったのです。しかし、頂点にあることが長く続けば、だれであれ、その地位がもたらす影響をうけないはずはありません。国家の興亡、家門の盛衰、いずれにおいても、歴史はこのことを示しています。ローマ人にしても 同じです。 すなわち、みずからを元来優れた民族であると思い込み、悠久の昔からそうであったかのように現在の地位を当然とみなし、ひるがえって、周辺の蛮族を蔑視したのです。 およそ蔑視は油断をうみ、油断は情報の欠如をもたらします。その結果、あらたな事態への対応を稚拙なものにします。同時に、油断は訓練をおこたらせ、みずからの力を相対的に低下させます。蛮族がもつ潜在力をみくびり、しかるべき対応ができなかったのも、もとはと言えば、そうしたローマ人の傲慢さに起因するものでした。