「社会経済の基礎」質問と回答その4 (再掲)
質問:ミラーとモディリアーニによるMM理論によれば、税制その他の要因を無視して考えれば、企業が資金調達するに当たり、自己資本(株など)でも他人資本(金融機関からの借り入れ)でも差はない、とされますが、日本のバブル崩壊後の不況において、銀行がダメなら証券市場で資金を調達しよう、という論理にはならなかったのでしょうか? 回答:日本経済ではバブル崩壊後、とりわけ1998年頃から(I-S)+(G-T)+(X-M)≡0という恒等式において、(S-I)=(G-T)+(X-M)がプラスになっています。 これは資金貸借の面で、貯蓄のうち国内の民間では使い切れなかった貯蓄・投資差額を、財政赤字(GーT)分は政府へ、貿易黒字分(XーM)は海外に貸し付けていることを意味します。 これは本来、ありえない状況です。なぜなら「資本主義」とは、企業家が銀行から借り入れたり、株式を発行して他人資本を集め、不確実性に満ちた世界に挑む経済制度だからです。MM理論等はこうした状況を想定しています。ところが日本では、企業がカネを借りるのではなく貸しています。企業は銀行に「貸し剥がし」を迫られた四半世紀前から、内部留保を貯め込み自己資本で経営し、残ったカネは貸すようになりました。 日本の企業はバブル後に銀行離れを起こしただけでなく、ものづくりで稼ぐことからも離れ、証券市場から「借り」ずに「貸す」方に向いてしまったのです。これはものを作って稼ぐ自信(企業家精神)を失ってしまったことを指しています。
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