2024年12月15日日曜日

ベンヤミンと貧困 (再掲)

ベンヤミンは、 「手」にもとづく 認識の成果としての 技術の巨大な発展が 全く 新しい貧困状態を もたらしたと指摘している。  「技術の巨大な発展とともに、 まったく新しい 貧困が 人類に襲いかかってきたのである。」 (「貧困と経験」『著作集』第1巻)  技術は 不断の発明・発見によって 次々に 新しいものを作り出しては 古いものを破壊していく 「創造的破壊」(creative destruction) (シュムペーター『資本主義・社会主義・民主主義』) をもたらす。  機械は急速に進化していき、 不断に 「倫理的摩滅」にさらされている。 (『資本論』第1巻、P.528参照)  それとともに 人間の生活を支えている 周囲の事物は ことごとく変化してしまうならば、 人間は もはや 自らの過去の経験を 頼りにすることができず、 つねに 最初から新たにやり直すしか なくなってしまう。  「まだ 鉄道馬車で 学校へかよったことのある ひとつの世代が、 いま、 青空に浮かぶ雲のほかは 何もかも 変貌してしまった 風景のなかに立っていた。 破壊的な 力と力がぶつかりあい、 爆発をつづけているただなかに、 ちっぽけな よわよわしい人間が立っていた。  ・・・これはそのまま、 一種の新しい野蛮状態を意味する。 野蛮? そのとおりである。  ・・・経験の貧困に直面した野蛮人には、 最初からやりなおしを するほかはない。 あらたにはじめるのである。」 (「経験と貧困」)  これは、 1933年の「経験」状況である。  ベンヤミンは、 人生における経験が ゆっくりと時間をかけて つくられていくような 「完成する時間」に対して、 「永劫回帰」する時間を 対置する。 「・・・完成する時間・・・は、 着手したものを 完成することを 許されない ひとびとが住む 地獄の時間と対をなしている。」 (「ボードレールのいくつかのモチーフについて」 『著作集』第6巻)

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