2023年5月13日土曜日

怒りの葡萄 上巻 早川書房 p.69~70 より

「なんだ、おまえ、ジョー・デイヴィスの息子じゃないか!」 「そうだよ」と運転手は答える。 「なんだってそんな仕事してんだ。 自分らの仲間をいじめる ようなまねして」 「日当が三ドルなんだ。 どうにもこうにも 食えなくて、 もううんざりしちまった。 女房子供がいて、 食ってかなきゃいけないからな。 この仕事は一日三ドルで、 それが毎日入るんだ」 「まあそういうことだよな。 でも、お前が一日三ドル稼ぐせいで、 十五から二十ほどの 家族が食えなくなるんだ。 百人近い人間が、 おまえの日当三ドルのせいで 路頭に迷う。 そうだろ」 運転手は言った。 「そんなことは考えてられないよ。 自分の子供らのことが大事だ。 一日三ドル、それが毎日入る。 時代は変わっていくんだよ、おじさん。 わからないのかい。 畑で食っていくなら、 千ヘクタールとか、 二千ヘクタールとか、 五千ヘクタールの土地と トラクターがなきゃだめだ。 農業はもう おれたちみたいな 零細農家にはむりなんだよ。 (以下略)」

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