2023年2月26日日曜日

「本当は、ずっと愚かで、はるかに使えるAI」 山田誠二 日刊工業新聞社 (再掲)

なんだ、AIってのはこんなもんか。 世間が煽り過ぎの側面は多分にありそうだな。 実際には、企業がAIを導入したはいいが、さんざん失敗した事例があるが、表沙汰になかなかならないだけで、そういうことは山ほどあるらしい。 そーだよね。 なんか2040年にシンギュラリティーがどうのこうのとか言って脅してくるが、なんか今の段階でAIが目覚ましい成果を挙げたという事例が、意外と少ないな、 とは思っていたが。 翻訳ひとつとっても、通訳だの翻訳だのは、近いうちに完全にAIにとって代わられる、と情報の専門家から聞いていたものだから、 てっきり俺の英語学習はすべて無駄だったのか・・・と思っていたが、案外そうでもないっぽい。 むしろ、日本語と英語は文の構造が全く違うので、Deepl翻訳を使うときでも、日本語をそのままDeepl翻訳につっこめば、自然な英語が自動的に出てくる、ということは、むしろ少ない。 もとの日本語を人間がいじってやる必要がある。 著者が主張するのは、AIが得意なこと、人間が得意なこと、をしっかり理解して、共存共栄を期することのようだ。 いいじゃないか! 新井紀子さんの著書とあわせて読むと、より納得がいく。 お二人とも多分同僚だから。 よく、研究者が、複数の自動車を模した模型たちが、自律的に動き回っているのを見せて、 はい、現実の世界もいずれこうなります、みたいなデモンストレーションを行ったりするが、 モデル化された実験室の中と、現実に自動車が行き交う世界というのは、少なくともAIにとっては次元の違う話らしい。 それが可能だと思えるのは、むしろ人間が、生育する中で、自然と身につける、自覚すらしない「常識」を身につけているが、 AIはそういう「常識」がまったく欠けていて、プログラマーがいちいちプログラミングしないと、 AIはそういう当たり前の常識がまったくわからない、ということのようだ。 この話を聞いて、 自分はもしAIが自動運転する自動車が開発されたとしても、怖くて乗れないと思った。 アマゾンの物流倉庫で、 商品を積んだ輸送マシーンが自由自在に動き回っている映像を見る機会が増えてきたが、 それは、 AIの特性をよく理解している、ということではないか。 日本のように、むやみやたらになんでもAIに任せようとして失敗している、ということは、ザラにあるらしい。 AIに職を奪われることを過剰に怖れるのではなく、 AIの特性、人間の特性を認識し、棲み分け、共存共栄を目指すことが、両者にとっていわゆるWin-Winなのだろう。 AIにすべてを丸投げすることの危険性は、AIがAIを騙す、という側面があるからとのこと。 顔認証にしても、空港における危険物探知にしても、人間だったら騙されないような実に些細なことで、AIがAIを騙せてしまうらしい。 したがって、AIに丸投げ、というのは、実はとても危険なことでもあるようだ。 著者は、AIは基本的に未来に起きる想定外の事態に対応できない、と書いているが、 新井紀子さんの言を敷衍すると、 AIは、数理論理学、確率、統計学の3つを駆使して動いている、ということだから、 全く未来を予測できない、ということはないだろう。 しかし、それは飽くまで過去のデータの蓄積から、予測する性質のものだが。 そう考えると、AIならば未来を完全に予測できる、 というのは、やはり決定論のワナに嵌まっているように感じられる。 また、著者によれば、AIは価値評価が出来ない、ということだが、 具体的には、「良さ」「悪さ」を判断出来ない、ということらしい。 例えば、音楽でいうポップスは、 メロディーや歌詞が出尽くしているので、 実際に、サンプリングといって、 作曲すらせずに、断片的に音を拾ってきて、適当につなぎ合わせることで曲が作れてしまうらしい。 それをAIにやらせることは、た易いことだが、 そうやってAIが作った曲の、良し悪しは、やはり人間でないと出来ないらしい。

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