2022年3月8日火曜日

貨幣・勤労・代理人

信用膨張を繰り返した歴史のなかで、とくに注目しておきたいのは、十九世紀前半イギリスで戦わされた、リカードの参加した地金論争と、通貨主義と銀行主義との間で生じた通貨論争である。これらの論争は今日でもまだ決着をみない。一方の考え方にしたがえば、信用膨張とその後の恐慌の原因は、通貨量の大量増発によるものであるから、貨幣量さえ管理すれば、それ以外の信用も統制できることになるとする。他方の考え方にしたがえば、信用膨張は経済全体を反映するものであるから、銀行当局がその信用の一部である貨幣量だけ操作したとしても、信用全体を規制できるわけではないことになる。いずれの考え方も決定的に棄却されない状態が、すでに二百年近く続いていることを考えれば、おそらく双方の要因がほぼ同程度影響を及ぼしているのではないだろうか。(「貨幣・勤労・代理人」左右社 p.171 坂井素思)

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