Japanese Corporate Governance Evolution ―日経新聞コラム大機小機2023/11/8を基にGoogleの生成AIが作成―

 

日本型コーポレートガバナンスの歴史的系譜と現代的超克:1940年体制から「資本の論理」への構造転換

日本企業のコーポレートガバナンスをめぐる現代の摩擦や葛藤は、単なる制度設計上の技術的問題ではない。その深層には、第二次世界大戦期の戦時経済統制に起源を持ち、戦後の高度経済成長期に完成した「1940年体制」という強固な制度的慣性(経路依存性)が存在している。

戦時下の資金統制と配当制限がもたらした「資本と経営の分離」、それに伴うメインバンク制と「系列」による相互防衛システムは、株主の声を意図的に遮断することで経営陣の自律性を担保し、日本型経営の強みと弱みを同時に形作ってきた。本報告書では、日本型企業統治システムの歴史的形成プロセスを詳細に紐解き、近年のコーポレートガバナンス改革が直面している「形式(フォーム)」と「実質(サブスタンス)」の摩擦について、歴史的・構造的アプローチから包括的に分析する。

戦時総動員体制の構築とガバナンスの起源

日本の企業統治システムにおける最大の歴史的転換点は、1930年代後半から1940年代にかけての戦時経済統制期に求めることができる。日中戦争から太平洋戦争へと至る過程において、国家は限られた資源と資金を軍需産業へ集中させるため、それまでの市場原理を否定し、国家主導の強力な金融・経理統制を断行した。

金融・経理統制の開始と大株主支配の解体

戦時経済統制の端緒となったのは、第1次近衛内閣下の1937年9月に公布された「臨時資金調整法」および「輸出入品等臨時措置法」である1。これらの法制は、軍需産業や生産力拡充産業に対して優先的に資金を融通する一方、非急要部門への設備資金供給を厳格に選別・抑制することを目的としていた1

さらに、1938年4月には「国家総動員法」が公布され、政府は経済全般に対する包括的な統制権限を掌握するに至った1。この国家総動員法を法的根拠として、それまで企業の最高意思決定権を持っていた大株主(財閥家族や個人資本家)の権限をはく奪し、専門経営者に生産現場の指揮を委ねる「資本と経営の分離」が国策として推進されることとなった。

その具体的な手段となったのが、1939年4月に施行された「会社利益配当及資金融通令」(勅令第179号)および「会社職員給与臨時措置令」である1。これにより、資本金20万円を超える企業に対して一律に配当額の制限が課されるとともに、職員の初任給や昇任に対しても国家的な標準が設定された3

1940年には「経済新体制確立要綱」の閣議決定に伴い、これらの指令が「会社経理統制令(会社経理統治令)」へと統合・強化され、配当に対する制限はさらに厳格化された3。役員賞与や利益処分にいたるまで国家の統制下に置かれたことで、企業の利益を株主に還元するという株式会社の本来的な機能は停止した3。配当が低水準で安定化した結果、株式は実質的に固定金利の「債券」と同等の性質を持つようになり、株主が企業の経営を監視・規律するインセンティブは根底から失われた4


年代・時期

主要な統制法令・措置

企業統治および資金調達への影響

1937年9月

臨時資金調整法


輸出入品等臨時措置法1

軍需産業への資金・資源の優先配分、非急要部門への設備資金抑制1

1938年4月

国家総動員法1

金融・産業全般に対する政府の包括的統制権限の確立1

1939年4月

会社利益配当及資金融通令


会社職員給与臨時措置令1

資本金20万円超の企業の配当制限、職員給与・昇任の標準化による株主支配の形骸化3

1940年

経済新体制確立要綱


会社経理統制令3

配当制限のさらなる強化、役員賞与・利益処分の国家統制、株式の債券化3

間接金融への強制的移行とメインバンクの原型

戦時下の軍需インフレは企業の自己資本を急速に枯渇させ、企業は運転資金および設備資金の調達を全面的に銀行融資へ依存せざるを得なくなった。国家は、限られた金融資源を国策に沿って配分するため、直接金融市場を完全に無効化し、銀行を通じた「間接金融主導の統治システム」の構築を急いだ。

資金運用統制と銀行合同の推移

大蔵省は1939年9月、銀行局長名で「思惑資金貸出自粛に関する通牒」を発し、運転資金名目での投機や買いだめ資金の融資を抑制した5。さらに1940年8月には、預金残高5000万円以上の普通銀行に対し、半期ごとの資金計画の提出を義務付ける大蔵省銀行局長通牒を発した1

これらの行政指導を法的強制力へと高めたのが、1940年10月に制定された「銀行等資金運用令」である5。この勅令により、政府は以下の強力な権限を手に入れた。

  • 銀行の資金運用計画に関する変更・指定を直接命令する権限5

  • 一定額以上の貸出に対する許可制の導入5

  • 融資命令の対象金融機関を、従来の日本興業銀行から普通銀行全般へと拡張5

これによって、1941年7月には日本興業銀行を中心とする軍需手形の引受け制度が整備され、金融システム全体が軍需金融供給機関へと再編された6。1942年5月には「金融事業整備令」(勅令第511号)が公布・施行され、国家総動員法第16条に基づく強力な事業整備命令を背景に、銀行の統合・合同が強行された1。これにより、多数存在した地方銀行や中小金融機関は集約され、大蔵省のコントロールが及びやすいメガバンク体制の原型が形成された。

軍需融資指定金融機関制度と間接金融の確立

戦局が極限状態に達した1944年1月、政府は「軍需会社法」の制定に伴い「軍需融資指定金融機関制度」を発足させた1。これは、指定された軍需会社が必要とする膨大な資金について、あらかじめ政府が指定した特定の金融機関(幹事銀行)が責任を持って迅速かつ円滑に供給する制度であった7

この指定融資制度は、1945年3月に指定軍需会社以外の企業にも適用範囲が拡大され、当時の日本の全金融機関が供給する資金総額の6割から7割がこのルートを経由する事態となった1。この幹事銀行による一元的・集中的な資金供給こそが、企業と特定銀行との間に極めて緊密な依存・情報共有関係を生み出し、戦後の「メインバンク制」の制度的インフラを決定づけることとなった。

戦後の構造改革と相互防衛システムの形成

敗戦後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が断行した「財閥解体」をはじめとする経済民主化政策は、戦前の持株会社を通じた資本家支配を跡形もなく粉砕した7。しかし、この解体プロセスがもたらした株式の分散は、予期せぬ形で日本独自の「株式持ち合い」を誕生させる契機となった。

所有構造の激変と初期の株式買い占め対策

財閥本社の解体や政府保有株の一般放出により、1949年度には日本の個人の持株比率は69.1%という極めて高い水準に達した7。しかし、ハイパーインフレと物資不足に苦しむ個人株主は、株価の下落局面において株式を維持できず、急速に売却に動いた7。この市場の流動性の高さは、流動資金を持つ投機家による「株式の買い占め」や「敵対的買収」の嵐を呼び起こすこととなった7

この外部脅威に対抗するため、企業側は「グループ内企業」による株式の引き取りや、予防的な相互保有による「安定株主」の形成を模索し始めた7。1947年に制定された独占禁止法は、銀行の発行済株式保有制限を5%に制限したものの、銀行による株式保有自体は容認されていたため、銀行を中心とする企業グループ内での株式安定保有の動きが急速に強まった7

さらに、1965年の「昭和40年不況」に際し、暴落する株価を買い支えるために臨時で設立された救済機関である「日本共同証券」および「日本証券保有組合」が、その後に保有株式を処分する際、市場への直接放出を避けて、発行企業の「関連企業」や「メインバンク」「生命保険会社」などの取引金融機関へ一括して売却した7。これが、法人による組織的・安定的な株式保有比率を決定的に高める要因となった7

資本自由化と「株式持ち合い」の完成

日本企業における株式保有構造を「持ち合い」という鉄壁の防衛システムへと昇華させた決定的なトリガーは、1960年代後半から展開された「資本の自由化」である8

日本は1964年にIMF8条国へ移行し、同時にOECDへの加盟を果たしたことで、対内直接投資(資本取引)の自由化を国際社会に公約した9。これに伴い、1967年7月以降、5次にわたる段階的な資本自由化措置が実施されたが、これは当時の経営陣にとって、資本力に勝る「外資による日本企業の敵対的買収(乗っ取り)」という死活的な脅威を意味した7

この外資侵入への防衛策として、旧財閥系や主要都市銀行グループを中心に「安定株主工作」が官民一体で推進された7。企業集団内で相互に数パーセントずつの株式を持ち合い、議決権を行使しない「沈黙の株主」として機能させることで、市場における浮動株の割合を極限まで引き下げたのである8




[資本自由化(1967年〜)による外資の脅威] [cite: 7, 8, 9]
        │
        ├─► [救済機関(日本共同証券等)からの放出株受け皿化]
        ├─► [取引関係の維持・固定化を狙うメインバンクの株式取得]
        │
        ▼
[「安定株主工作」としての株式の相互持ち合い(クロス・シェアホールディング)]
        │
        ▼
[株主総会の形骸化・経営陣の絶対的自律性の確保(「系列」の完成)] [cite: 8]

1970年代から1980年代後半にかけて、日本経済が高度成長を遂げる中で、企業はエクイティ・ファイナンスを活発化させたが、その際も増資に伴う安定株主比率の低下を防ぐため、銀行や事業法人が新規発行株を相互に引き受け合った。また、1980年代後半には銀行自身が国際的な自己資本比率規制(BIS規制)に対応するために大規模な公募増資を行い、その多くを取引先の事業法人に保有させることで、銀行と企業の持ち合い関係は一層緊密化した。

この「持株会社なき財閥の再編」や「系列」の誕生により、経営陣は外部株主からのROE向上要求や退陣圧力を受けることなく、中長期的な設備投資や終身雇用を維持できた8。しかし同時に、この構造は株主の声を完全に遮断し、不採算事業の継続やイノベーションの遅れといった「規律なき経営(ガバナンス不全)」を温存する強力な障壁としても機能することとなった13


段階・年代

主な歴史的背景

所有構造の質的変化

ガバナンス上の意味合い

戦後直後(1945〜49年)

財閥解体、持株会社保有株の一般放出7

個人持株比率が一時的に急増(1949年度に69.1%)7

株主の分散による市場の混乱、投機家による買い占めリスクの上昇7

高度成長初期(1950〜60年代半ば)

昭和40年不況、救済機関による株式放出、独占禁止法の改正7

個人から取引金融機関・関連企業への株式シフト(法人化)7

銀行を中心とする「安定株主」の緩やかな形成、敵対的買収への予防7

資本自由化期(1960年代後半〜70年代)

IMF8条国移行・OECD加盟、5次の資本自由化措置(1967年〜)9

金融機関・事業法人間の組織的な「株式持ち合い」の完成7

外資による買収防衛の確立、「系列」による経営陣の絶対的自律8

バブル期(1980年代後半)

BIS規制対応、銀行の大規模公募増資、企業のエクイティ・ファイナンス7

銀行・事業法人間の持ち合いの極大化、相互保有ネットワークの固定化7

資本効率(ROE)軽視の深刻化、内部留保の積み増しと市場規律の喪失12

平成・令和のコーポレートガバナンス改革と形式主義の限界

バブル崩壊後のメインバンク制の機能不全に伴い、日本企業の低収益性と低い資本効率はグローバル市場における競争力低下の主因として厳しく批判されるようになった12。これに対し、政府や東京証券取引所は「株主主権」と「資本効率(ROE)」を重視する一連のコーポレートガバナンス改革を推進してきた。

資本コスト意識の欠如と日米格差

2014年の「スチュワードシップ・コード」策定、および2015年の「コーポレートガバナンス・コード」導入(2018年、2021年改訂)は、日本企業に対して「資本コストを意識した経営(原則5-2)」を明示的に要求するものであった12

欧米企業に比べて日本企業のROEが著しく低水準に留まり続けた背景には、日本の企業経営における「資本コスト」に対する認識の致命的な遅れが存在する12。米国等では、すでに40年以上前からビジネススクール等において、経営者候補が必ず学ぶべき基本概念として資本コスト(エクイティ・リスクプレミアム等)や「エクイティ・スプレッド」(ROEから自己資本コストを引いた数値)が位置づけられていた12

これに対し、日本では「経営者」を特別な専門職として捉える認識が薄く、ファイナンス・リテラシーが経営者の必須資質として体系的に共有されてこなかった12。この時間的・人材的格差が、企業の長期的な価値創造力を毀損してきた要因として指摘されている12

2023年以降に東京証券取引所(東証)が推進している「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業への改善要求」は、こうした長年の放置に対する強力な外圧となった。PBRは、以下のように数式分解される。

この算式が示す通り、PBR1倍割れとは、市場が評価する企業価値(株価)が、企業を解散して得られる純資産価値を下回るという「解散価値割れ」の異常状態である。東証がこの状態の改善を強く求めた背景には、多くの日本企業においてIR体制が極めて未整備であり、株主・投資家に向き合う意識が決定的に乏しく、コーポレートサイトのデザインや開示情報が何年も放置されているといった「対話不全」の実態があった15

実質化を阻む構造的課題

現在、日本企業の間では社外取締役の増員や任意の指名・報酬委員会の設置など、「形(フォーム)」の整備は急速に進みつつある。しかし、それが本質的なイノベーションや迅速な企業代謝を促す「実質(サブスタンス)」として定着しているかと言えば、未だ多くの摩擦を抱えている。経済産業省が公表した「CGS(コーポレート・ガバナンス・システム)ガイドライン」等の分析は、日本企業が抱える生々しい機能不全を浮き彫りにしている。

  • 不十分な事業ポートフォリオ見直し: 明確な戦略や軸を持たないまま、非中核事業や撤退が必要な赤字事業に対して無駄な経営リソース(人材、資金、設備)を割き続けている13

  • 「内向きのコンセンサス」による意思決定の遅滞: 社内合意の形成を過度に重視する結果、意思決定に膨大な時間を要し、グローバル市場の変化スピードに取り残されている14

  • 取締役会の実効性不足: 取締役会での議論が、短期的な個別業務執行の承認に終始しており、本来取り組むべき「中長期経営戦略」や「社長・CEOの後継者(サクセッション)計画と監督」についての本質的な議論が決定的に不足している14

  • 役員人事・報酬システムの不整合: 中長期的な成長を促すための「中期業績連動報酬」を導入している企業はわずか14%(短期業績連動報酬は61%)にとどまっている14。さらに、報酬委員会(法定・任意)を設置している企業であっても、そのうち1割強(14%)の企業では社長・CEOの報酬自体が審議対象外とされているなど、経営陣の規律付けとして機能していない14

政策保有株式の「見せかけの縮減」と開示規則による規制包囲網

日本型コーポレートガバナンス改革において、株式持ち合いの解消は最重要テーマの一つである。投資家や市場からの監視の目が厳しくなる中、統計上、企業が保有する「政策保有株式」の規模は縮減傾向を見せている。

区分変更という抜け穴と実態分析

有価証券報告書の開示データによれば、事業会社が保有する政策保有株式の総額は、2023年の約29兆円から2024年の約24兆円へと18%縮減され、金融機関(銀行・保険等)にいたっては約28兆円から約21兆円へと26%という劇的な縮減を示している16

しかし、この縮減の「内実」には重大な懸念が存在する。株式を市場や第三者に実際に売却して持ち合い関係を実質的に解消するのではなく、有価証券報告書上の区分を「政策保有目的」から「純投資目的(株価変動や配当の獲得のみを目的とする保有)」へと形式的に変更するだけで、保有し続けるという「見せかけの縮減」が広く行われていたのである。

第三者機関による実態調査によれば、保有目的を「政策保有以外(純投資等)」から「純投資」に区分変更した事例(173社)について分析した結果、約半数が2025年3月期(またはそれに近接する時期)に変更を行っていた17。注目すべきは、それより早い2021年3月期に変更を完了していた事例(45社、全体の26.0%)のうち、区分変更を行ってから約5年間、一度も売却を行うことなく当該株式をそのまま保有し続けている企業が一定数存在したことである17。これは、開示上の規制を逃れるための「形式的対応」であり、実際の株式持ち合い関係は維持されたままであることを意味している。

2025年3月期「開示府令改正」による形式主義の打破

こうした企業の不誠実な「区分変更の抜け穴」を塞ぐため、金融庁は2025年1月31日に「企業内容等の開示に関する内閣府令(開示府令)」の改正を公布・即日施行した18。この改正は、2025年3月31日以後に終了する事業年度(すなわち2025年3月期決算)の有価証券報告書から直ちに適用される18

この改正により、政策保有株式から純投資目的へ変更した株式に関して、開示要求が以下のように劇的に厳格化された。

  • 開示対象期間の劇的な拡大: 従来の「過去1年以内」から、「当期を含む最近5事業年度以内」に目的変更を行った全ての株式へと開示対象が大幅に拡大された16

  • 定性的情報の開示義務化: 単に変更したという事実だけでなく、個別の銘柄ごとに「保有目的を変更した具体的な時期」「変更した詳細な理由」「変更後の具体的な保有・売却方針(いつまでに売却するのか、またはなぜ継続保有するのか)」を開示することが新たに義務付けられた21

  • 取引・提携関係の透明化: 保有目的を変更した株式の相手先企業と、現在も取引関係や資本業務提携関係がある場合、その取引の具体的な概要(「重要な契約等」)の記載事項も追加された19

この制度包囲網により、企業は「帳簿上の区分変更」だけで持ち合いを維持する言い訳を失うこととなった。過去5年間に区分変更した全ての銘柄について、投資家に対して「なぜ純投資なのに何年も売却しないのか」という矛盾を説明せねばならず16、不合理な説明は株主総会における経営陣の再任拒否や、アクティビストからの格好の追及材料となるからである。


項目

改正前の規制枠組み

2025年3月期以降(改正開示府令)の規制枠組み

区分変更時の情報開示期間

直近「1事業年度」のみ開示対象21

直近「5事業年度以内」の変更履歴を全て開示16

主な開示要求事項

保有目的の変更事実の簡素な開示

変更の「具体的な時期」「詳細な理由」「変更後の保有・売却の確約方針」21

実質的な持ち合いに対する効果

帳簿上の区分変更のみで「政策保有株の縮減」を装うことが可能

長期不売却銘柄の矛盾が白日の下に晒され、実質的な売却への圧力が最大化17

結論

戦時中の国家総動員法および金融事業整備令等を発端とする日本の企業統治システムは、株主を排除して専門経営者の絶対的自律性を確保することで、戦後日本の高度経済成長を推進する強力なエコシステム(運命共同体)として最適化されていた1。しかし、バブル崩壊を経て世界市場がグローバルな「資本の論理」によって再編される中、このかつての優位性は、資本効率の低迷とイノベーションの機能不全を温存する構造的要因へと反転した12

近年のコーポレートガバナンス改革が、形式的な社外取締役の増員や、政策保有株式の帳簿上の区分変更といった「形の整備」にとどまり、本質的な企業代謝の遅れ(非中核事業への無駄なリソース配分や意思決定の遅さ)を招いてきた事実は13、1940年体制から受け継がれた歴史的な所有構造の強固さを証明している。

しかし、2025年3月期の開示府令改正をはじめとする最新の規制制度は18、こうした「見せかけのガバナンス」を許さない段階へと日本企業を追い詰めている。企業はもはや、閉鎖的な取引関係を保護するための「持ち合い防壁」に安住することはできない8

日本企業がこの過渡期の摩擦を乗り越え、持続的なイノベーションと新陳代謝を実現するためには、これまでの「内向きの運命共同体」としての企業意識を脱ぎ捨て、経営者が財務的なリテラシー(資本コストと収益性)を備えた「専門職」として自らを再定義することが求められている12。歴史的な経路依存性の遺産に真の決別を告げ、グローバルな規律の中で自らの存在意義と社会的責任を両立させる統治のあり方を確立できるか否か、日本企業は今、その真価を問われている。

引用文献

  1. (1) 戦時期における金融の統制と計画化 - 昭和6年(1931年)の満州事変以後 - 日本銀行, https://www.boj.or.jp/about/outline/history/hyakunen/data/hyaku4_2_3_1.pdf

  2. 国家総動員法 - 世界史の窓, https://www.y-history.net/appendix/wh1504-065_0.html

  3. 日本企業と株主エンパワーメント(shareholder empowerment) - 一橋大学機関リポジトリ, https://hit-u.repo.nii.ac.jp/record/2047847/files/hogaku0210203130.pdf

  4. 日本的経営は戦時体制の遺物 - 資本市場研究会, https://www.camri.or.jp/files/libs/1546/202011301606389427.pdf

  5. 第二次世界大戦期の金融制度改革と金融システムの変化 - 東京大学, https://www.cirje.e.u-tokyo.ac.jp/research/dp/94/j21/dp.pdf

  6. 1. 日中戦争のぼっ発と金融統制 - 第四北越銀行, https://www.dhbk.co.jp/company/library/pdf/h_15.pdf

  7. 株式持ち合いの変遷と展望 - 大和総研, https://www.dir.co.jp/publicity/magazine/m09hnc0000002aoo-att/11072001.pdf

  8. 株式持ち合い 読み - 証券用語解説集 - 野村證券, https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ka/k_mochiai.html

  9. 第2章 日本の証券市場の歴史, https://www.jsri.or.jp/publish/market/pdf/market_33/33_02.pdf

  10. 株式持ち合い - Wikipedia, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E6%8C%81%E3%81%A1%E5%90%88%E3%81%84

  11. 政策保有株式(株式持合い)成り立ちの経緯とは - 日本成長支援パートナーズ, https://ngspartners.jp/article/cross-shareholdings/1480.html

  12. 【コラム】 「コーポレート・ガバナンス改革の進展と社外取締役の役割」 (その2) - 機械振興会館, https://www.jspmi.or.jp/system/file/6/110/202103columnFujioka.pdf

  13. コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針 (CGS ガイドライン) 2022 年 7 月 19 - 経済産業省, https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/pdf/cgs/guideline2022.pdf

  14. コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針 (CGSガイドライン)について - 経済産業省, https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/pdf/20170421/20170421_03.pdf

  15. 「資本コストや株価を意識した経営」 - 課題解決に向けた企業の取組み事例集 - JPX, https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/jr4eth0000004vj2-att/t13vrt000000dli6.pdf

  16. 政策保有株式の縮減状況~2024年版~ 2025年11月11日 - 大和総研, https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/securities/20251111_025408.html

  17. 2025年3月期 有報開示事例分析 第5回:株式の保有状況(政策保有株式等) | EY Japan, https://www.ey.com/ja_jp/technical/corporate-accounting/commentary/presentation-of-financial-statements/commentary-presentation-of-financial-statements-2025-10-20-02

  18. 令和7年度 有価証券報告書レビューの審査結果 及び審査結果を踏まえた留意すべき事項等 - 金融庁, https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20260327-2/02-2.pdf

  19. 有価証券報告書開示に関する改正 – 重要な契約等・株式の保有状況の開示 –, https://kpmg.com/jp/ja/insights/2025/05/revision-securities-report-disclosure.html

  20. 開示府令の改正(政策保有株式の開示拡充) - 大和総研, https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/securities/20250226_024932.pdf

  21. 政策保有株式の開示に関する課題と展望 - 大和総研, https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/securities/20251029_025384.pdf

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