菜根譚 (再掲)

    

深い闇に、身を投げる。

ざわつく世界が、しっとりとした風に溶けていく。

今日まで運んできた、重たい荷物。

そんなものは、森の湊に置いていけばいい。

ここは、朽ちゆくものと、産まれるものが、

静かに入れ替わる場所。

喉を焼く、一杯。

鋭い熱気のあと、古木の香りが鼻を抜ける。

欠けていくことを知る身体に、それは深く、静かに染み渡る。

すべてを脱ぎ捨てて残る、名もなき熱。

何ものをも裁かない暗闇を抱いて、

私はただ、静寂の深淵へと錨(いかり)を下ろす。

ふと漂う、雨に濡れた土の予感。

それは、膨大な時間のなかで、

私という「個」を明日へ繋ぐ、たった一つの道標。

波音は消え、心はただ、凪いでゆく。

暗闇の奥に、まだ名もなき**ひと粒の火波(ひなみ)**を見つけた。

凍てついた夜を溶かし、新しい朝を連れてくるのは、

きっと、こんなに小さな光だ。

私は、私を、信じてみる。

おやすみなさい。

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