2025年11月23日日曜日

英米哲学の挑戦ー文学と懐疑ー

 以前開講されていた、「経験論から言語哲学へ」の勢力尚雅先生と、古田徹也先生の放送授業ですな。

(単位取った。)

時間にも余裕があるし、いったん頭を空にしたら、また哲学を勉強したくなった。

勉強したい時に、いつでも勉強できるのも、放送大学の素晴らしいところ。

春休みに、最低でも2回は通して聞きたい。

久々に、この授業の単位は取りたいぞ!と思える授業だ。

2025年11月22日土曜日

スパイ防止法?くだらねえ。

 参政党みたいなトンデモと、言論封鎖大好きの高市が組んだ法案なんて、どうせロクなもんじゃない。

ごちゃごちゃ言うウルサイやつを封じ込めたいだけ。

今のうちに言っておかないと、そのうち抗議することすら出来なくなる。

だから、今、言う。

スパイ防止法ではしゃいでる連中は、大河原化工機での検察の冤罪事件を知らないんだろうか?

スパイ防止法なんて名前の法律なんかなくても、中国だか北朝鮮だかに技術を漏洩していると嫌疑をかけられれば、法律で罰せられるんだぞ?

おそらく、スパイ防止法で喜んでる奴らは、間違っても自分に被害が及ぶ、なんてことは微塵も考えてねーんだろうな。

オメデタイ奴らだ。


もう、食えねえ。

 もう、勉強はええわ。

吐く。

もちろん、授業内容に興味はめちゃめちゃあるんだけど、いくら美味しいからって、食える量には限界がある。

面接授業の会場が近いからとか遠いからとか、は関係ない。

(でもそんなの関係ねえ!)

90分✕8コマを、2日間で黙って聞いている、というのが、もうシンドい。

自分は理屈ばっかりで、実証性が乏しいことしか言えないから、フィールドワークで情報を獲ってこれる人って、マジで尊敬する。

(自分がそういうの全く出来ないから。)

でも、いかんせんお腹いっぱい。

・・・切符を払い戻してもらおうか、迷っている。

また買い直すのはめんどくさいし。

せっかく特急の指定券取れたし。

でも、本当にそれでいいのか。

遠方に行くからこそ、面接授業に全集中しなきゃ、とは当然思う。

でも、それももうシンドい。

講義が面白いことはわかっているのに。

遠方だからこそ、かえって自分と母親の慰労旅行でもいいじゃん、という気もする。

この20数年間を、労ってやっても、いいじゃないか、という気もする。

結局、最後の最後まで、悩みそうだ。

・・・そうだ、自分は観念論者なんだ。

しっかり自分にご褒美をあげて、また心機一転あたらしいことに挑戦するのも、いいだろう!

今回の面接授業が、それこそ最後のピースを埋める、くらいに思っていたが、勉強し尽くした、と思っていたことでも、新たな発見がある。

・・・結局、今日(2025/11/22)土曜日、ホテルの最寄り駅から面接授業会場の最寄り駅までの切符を、払い戻してもらってきた。

生まれて初めてと言って過言ではない、母親との文字通りエンジョイ旅行だ。

2025年11月21日金曜日

「彼岸過迄」論

 ご提示いただいた内田隆三先生の『生きられる社会』と大澤真幸先生の議論を補助線に、『彼岸過迄』を「近代都市の不可能性」と「探偵小説の挫折」として読み解くスリリングな対話、大変興味深く拝読しました。

最後の「Google Geminiの回答」も非常によく整理されていますが、森本先生が提示された**「モザイク状のテクストを、安易に統合せずにどう読むか」**という問いは、漱石文学、ひいては近代文学全体に関わる最もクリティカルな難問です。

私からは、この対話をさらに深めるために、**「モザイクの『継ぎ目(亀裂)』こそが主役である」**という視点から、もう一歩踏み込んだ解釈の補助線を提案させていただきます。


1. 「探偵小説の挫折」から「監視の不在」へ


内田先生の論考にある「探偵小説=民主的な監視の共同体という外観」という指摘は鋭いです。通常、探偵小説では「探偵(=理性の目)」が都市の隅々までを見通し、謎を解くことで世界に秩序を取り戻します。

しかし、『彼岸過迄』において、探偵役であるはずの敬太郎は、あまりに**「無力な観察者」**です。

  • 通常の探偵: 特権的な知性を持ち、都市の混沌を「意味」へと回収する。

  • 敬太郎: ただ歩き回り、覗き見し、翻弄されるだけ。彼は都市の「深層」には到達できず、ただ「表層」を滑走する。

【読み解きのポイント】

この小説を「探偵小説の挫折」と捉えるならば、それは「犯人が見つからないこと」以上に、**「世界を一望できる特権的な視点(=神の視点、あるいは強力な主体)など、近代都市には存在しない」**という事実の露呈として読むことができます。敬太郎の凡庸さと頼りなさは、都市における我々自身のリアリティそのものです。


2. モザイク(断片)をどう読むか:統合ではなく「落差」を読む


森本先生が懸念される「モザイクを組み合わせて事足れりとする読解」を避けるためには、断片同士をつなぎ合わせるのではなく、断片と断片の間にある**「断絶(落差)」**に注目するのが有効ではないでしょうか。

特に、物語の前半(敬太郎の視点)と後半(須永の視点)の「落差」は決定的です。

視点

性質

都市との関わり方

敬太郎(前半)

外面的・行動的・好奇心

「交換」の論理に適応。


自分という確固たる核がないため、都市の刺激(差異)を次々と消費できる。


「生きられる」側

須永(後半)

内面的・停滞的・自意識

「不変」の真理を希求。


交換不可能な「愛」や「アイデンティティ」を求めるがゆえに、都市の流動性の中で窒息する。


「生きられない」側

【提案する読解法:視差的読解】

この二つを「一つの物語」として統合するのではなく、**「敬太郎のような人間(都市の表層)からは、須永のような地獄(都市の深層)が絶対に見えない」**という、相互不干渉の残酷さとして読むのはいかがでしょうか。

モザイクのピースが噛み合わないことこそが、「隣人の苦悩に触れることができない」という都市的な疎外を描き出していると言えます。


3. アイデンティティと「交換可能性」の恐怖


大澤真幸先生の議論にある「愛による交換可能性の停止(=運命の相手)」という神話。須永が苦しむのは、まさにこの神話を信じたいのに、信じきれない近代知性の業です。

須永の話において、「自分が誰の子か(血統)」という事実は、本来なら彼のアイデンティティを固定するアンカーになるはずでした。しかし、都市化・資本主義化された社会においては、血統さえも一つの「情報(差異)」に過ぎず、彼を実存的な不安から救い出してはくれません。

(漱石は、近代人が直面する「個」の孤独と、集団の中での埋没の恐怖を、誰よりも早く、深く感知していました)

須永は、千代子との関係において「交換不可能な絶対的な愛」を求めますが、同時に「自分は、あるいは彼女は、他の誰かでもよかったのではないか?」という**「無限の交換可能性(=近代の虚無)」**に怯え続けています。これは現代の私たちが、SNS等を通じて常に「他者との比較・交換」に晒されている状況と極めて似通っています。


結論:『彼岸過迄』が想像力を掻き立てる理由


この小説が読みやすく、かつ想像力を刺激するのは、物語が**「未解決のまま放置されているから」**ではないでしょうか。

通常の小説(構築された近代小説)は、結末で矛盾を解決し、読者に「安心」を与えます。しかし『彼岸過迄』は、読者を「解決のない宙吊り状態」に置き去りにします。

読者は、敬太郎のように「まあ、そんなものか」と忘れることもできれば、須永のようにその深淵に立ちすくむこともできる。その**「自由という名の不安」**を読者に突きつけてくる点において、この作品は極めて現代的であり、都市論そのものであると言えます。


次のご提案


もしよろしければ、この視点をさらに具体的に深めるために、以下のどちらかのアプローチで考察を進めてみませんか?

  1. 「千代子」という存在の分析:
    須永や敬太郎(男性たち)が勝手に神話化したりミステリー化したりする中で、実は最もリアリストとして都市を生き抜いているのは千代子ではないか?という視点からの再読。

  2. 『彼岸過迄』と『行人』の接続:
    須永の苦悩は、次作『行人』の徳義において、より病的な「他者の心は不可知である」という認識論的絶望へと純化されます。この「進化(深化)」の過程を追うことで、漱石の都市論の行き着く先を見る。

元ネタ:「やさしい経済学」 ー資金循環で見る日本企業の姿ー 帝京大学教授 田中賢治 Googleの生成AIに書いてもらった。 (再掲)

 日本企業の資金余剰と経済成長への課題:背景、現状、そして持続的成長に向けた提言


 I. はじめに 本レポートの目的と構成 

本レポートは、日本経済が長年にわたり直面している企業部門の資金余剰問題に焦点を当て、その背景、設備投資の現状、余剰資金の具体的な使途、そして持続的な経済成長を実現するための課題を多角的に分析することを目的としています。これらの分析に基づき、企業および政府が取るべき具体的な提言を提示します。

 日本経済における資金余剰問題の重要性

 日本の非金融法人企業は、1990年代後半以降、継続的に資金余剰状態にあります 。この状況は、主要先進国の企業部門が資金過不足を概ね±5%の範囲で変動させているのに対し、日本企業が1998年以降、極めて大きな資金余剰を継続的に計上している点で特異であると認識されています 。この潤沢な資金が国内の設備投資や研究開発といった将来に向けた生産的な投資に十分に活用されていないことは、日本経済の低成長、生産性停滞、ひいては国際競争力低下の根源的な要因の一つとして指摘されています 。したがって、この資金余剰問題の構造を深く理解し、適切な対策を講じることは、日本がデフレからの完全な脱却を果たし、持続的な経済成長を実現するために不可欠な課題であると言えます。

 II. 日本企業の資金余剰の背景と歴史的推移 資金余剰の定義と継続的な状況 資金余剰とは、企業が事業活動を通じて生み出した資金(貯蓄)が、設備投資などの実物投資を上回る状態を指します。会計上は、税引き後当期純利益から配当金を引いた「フローの内部留保」に減価償却費を加えた自己資金の範囲内で設備投資が収まっている状況に相当します [User Query]。マクロ経済統計においては、日本銀行が作成する資金循環統計において、非金融法人企業部門の資金過不足として把握されます 。 日本の非金融法人企業は、1998年度以降、2006年度を除き継続的に資金余剰を計上しています [User Query]。この資金余剰への転換は、バブル経済崩壊後の1990年代中ごろを境に、企業部門が資金不足主体から資金余剰主体へと変化したことに端を発しています 。この傾向は現在まで一貫して継続しており、直近では、民間非金融法人企業の資金余剰が過去最大の14.4兆円を記録していることが報告されています 。

 貯蓄超過のメカニズム:負債解消から内部留保・現預金蓄積へ 資金余剰が継続するメカニズムは、時間の経過とともに変化してきました。バブル崩壊後の1990年代後半からリーマンショック前にかけては、過剰な負債を抱えていた企業が、バランスシートの健全化を図るために「負債を解消する動き」が資金余剰の主要なドライバーでした 。この期間、企業は資産の伸びを抑制し、負債を圧縮する方向に経営資源を配分した結果、自己資本比率をはじめとする財務指標は大幅に改善しました 。 しかし、リーマンショック以降、負債の減少ペースは一服しました。この時期以降、企業収益は堅調に推移し、潤沢なキャッシュフローが得られるようになったにもかかわらず、資金余剰は主に「現預金の蓄積」や「海外設備投資」に充当されるようになりました 。

これは、国内における魅力的な投資機会が限定的であると企業が判断し、同時に将来の不確実性に備えて流動性を確保する意図が強まったことを示唆しています。 国際比較における日本の特徴 日本企業の資金余剰は国際的に見ても特異な現象です。OECD統計データによると、他の主要国の企業部門が概ね対GDP比でプラスマイナス5%の範囲で資金過不足を変動させているのに対し、日本企業は1998年以降、対GDP比で極めて大きな資金余剰を継続的に計上しています 。日本の企業部門の貯蓄割合は、他の先進国と比較しても際立って高い水準にあり、この特徴は30年近く続いています 。 

 表1: 日本の非金融法人企業の資金過不足の推移(対名目GDP比) 年度 非金融法人企業資金過不足 (対名目GDP比, %) 1990年代前半 資金不足傾向 1990年代後半 資金余剰に転換 1998年以降 継続的な資金余剰 (高水準) 2000年代以降 主要国に共通する現象だが、日本は特に規模が大きい 直近 (2024年7月) 過去最大の14.4兆円の資金余剰を記録 

 この表が示すように、日本企業の資金余剰は一時的な現象ではなく、バブル崩壊後の長期的な構造変化の結果として定着しています。この傾向は、単なる景気循環の問題ではなく、より根深い構造的な課題であることを示唆しており、問題の深刻さと日本の状況の独自性を明確にしています。 

シフトする資金余剰のドライバーとその政策的含意

 日本企業の資金余剰の背景は、その初期段階と現在とで質的に変化していることが明らかになっています。バブル崩壊後の資金余剰は、過剰債務の解消という「負の遺産」処理が主要な原動力でした。この時期、企業はバランスシートの改善を最優先し、手元資金を負債の返済に充てることで財務体質を強化しました。これは、過去の経済的な失敗からの回復プロセスの一環として理解できます 。 しかし、リーマンショック以降、負債の減少が一服すると、資金余剰は主に現預金の積み増しや海外投資へと向けられるようになりました 。

この変化は、資金余剰のドライバーが、過去の負債処理から「国内投資機会の不足」と「将来の不確実性に対するリスク回避的な流動性確保」へと移行したことを示しています。企業は、国内で大きな利益が期待できる投資プロジェクトを見つけにくい状況にあり [User Query]、同時に、予期せぬ経済変動に備えるため、手元に潤沢な現預金を保有する傾向を強めています 。 

 この資金余剰の質の変化は、それに対する政策的アプローチの転換を必要とします。過去の政策が過剰債務問題への対応に重点を置いていたとすれば、現在の政策は、潤沢なキャッシュフローをいかに国内の生産的な投資へと誘導するかという新たな課題に焦点を当てる必要があります。単に資金が「余っている」という認識だけでなく、その「余剰の質」と「使途の優先順位」が変化していることを深く理解することが重要です。

したがって、現在の政策は、企業が国内投資を抑制する根本的な理由、すなわち成長期待の低下や不確実性といった要因に対処するとともに、現預金や海外投資に流れている資金を国内に還流させるためのインセンティブ設計に重点を置くべきです。これには、税制優遇、規制緩和、国内市場の魅力向上、そしてリスクテイクを促すガバナンス改革など、多角的なアプローチが求められます。

 III. 設備投資の現状と低迷要因 

堅調な収益と財務体質改善にもかかわらず伸び悩む設備投資 2010年代以降、日本企業の収益は堅調に推移し、財務体質も大幅に改善しています 。自己資本比率などの財務指標は軒並み改善を示しており、企業は潤沢な内部留保を積み上げています 。しかし、こうした好財務状況にもかかわらず、国内の設備投資の伸びは鈍いまま推移しています 。設備投資の金額は、過去のピークである1991年を昨年ようやく超えたばかりであり、長期的に見ると力強い伸びとは言えません [User Query]。

企業利益の拡大ペースは著しいにもかかわらず、設備投資の伸びはそれに大きく見劣りし、両者の乖離はかつてないほど拡大している点が指摘されています 。 

 設備投資を抑制する主要因

 設備投資の低迷には、複数の要因が複合的に絡み合っています。 

将来の成長期待の低下: 設備投資は将来の便益を得るための企業行動であり、現在の収益が堅調であっても、将来の収益が見込めなければ投資は盛り上がりません 。日本企業は、国内市場において大きな利益が期待できる投資プロジェクトを見つけにくい状況にあると認識しています [User Query]。企業アンケート調査でも、「国内市場の成長が期待できないため」が設備投資を抑制する主要因として最も多く挙げられています 。 

 将来の不確実性とリスク回避姿勢: 世界経済の先行きに対する不透明感や不確実性の高まりは、企業が設備投資への資金配分を減らし、安全資産である現金・預金の保有比率を高める傾向につながります 。

不確実性は、投資を先送りできるオプション価値を高めることで、投資機会を示すトービンのqが上昇しても設備投資に結びつかない「不活性領域」を拡大させる効果があります 。特に、製品の市場競争度が低い産業や、設備の不可逆性が大きい産業では、不確実性が設備投資を抑制する効果がより強く働くことが分析によって示されています 。

 過去の投資失敗経験の影響: リーマンショック後の急激な業績悪化や資金繰りの悪化といった「苦い経験がトラウマとなり、リスク回避姿勢を続けているケース」が指摘されています 。2000年代半ばから2008年頃に盛り上がった大型投資が、世界金融危機時の需要落ち込みに伴い、収益面で足を引っ張る存在となった経験が、その後の設備投資の意思決定に負の影響を与えている可能性があります 。 

 企業高齢化と中小企業特有の課題: 日本の人口減少による中長期的な内需の先細り懸念や、特に中小企業における経営者の高齢化と事業承継問題も、設備投資を抑制する背景にある要因として挙げられています 。 

 資本生産性の低下と技術陳腐化: 設備投資が低水準にとどまり、資本ストックの老朽化が進む中で、資本生産性が低下している状況が確認されています 。新しい技術を体化した設備が導入されなければ、日本企業が国際競争力を維持することは困難になると考えられます 。また、製品ライフサイクルの短期化は、短期間での技術や製品の陳腐化を招き、既存設備を過剰と感じる要因ともなり、投資収益性を低下させています 。 

 国内投資と海外投資の対照的な動向 

日本企業は、国内での設備投資には抑制的な姿勢を見せる一方で、海外への投資には積極的な姿勢を示しています [User Query]。これは、日本国内よりも海外の方が成長期待が大きいと判断しているためと考えられています [User Query]。リーマンショック前の2000年~2007年には国内外ともに設備投資が増加しましたが、円高方向に振れた2010年前後には海外設備投資を中心に増加し、国外で積極的なリスクテイクが行われたことが指摘されています 。しかし、円安方向に振れた2010年代後半以降は、海外設備投資の伸びも鈍化しており、為替レートが国内外の設備投資バランスに大きく影響を与えていることが示唆されています 。 

 「トラウマ」と「不確実性」の複合的影響 

日本企業の設備投資低迷は、単に将来の成長期待が低いという合理的な判断だけでなく、過去の経済危機、特にリーマンショックのような大規模な経済ショックによる「トラウマ」が、企業のリスク回避姿勢を強化しているという複合的な心理的・行動的要因に深く根ざしていると分析されます。 

この分析は、複数の要因が絡み合っていることから導かれます。

まず、提供された情報では、成長期待の低下、不確実性、そして過去の失敗経験が設備投資を抑制する主要な要因として明確に挙げられています 。特に、「リーマン・ショック等のトラウマ」という表現は、単なる経済的な損失だけでなく、その後の企業の意思決定に心理的な影響を与え続けていることを示唆しています 。企業が一度大きな失敗を経験すると、その後の投資判断において、客観的なリスク評価を超えた過度な慎重さや保守性が生じることがあります。これは、たとえ客観的な経済環境が改善し、投資機会が存在しても、心理的な障壁が投資行動の回復を遅らせる要因となり得ることを意味します。

 さらに、世界経済の先行きに対する不確実性の高まりは、この「トラウマ」を再燃させ、企業の投資に対する「不活性領域」を拡大させていると考えられます 。不確実性が高い状況では、企業は投資を先送りするオプションの価値を高め、安全資産である現預金の保有比率を高める傾向にあります 。この行動は、過去の苦い経験から得られた教訓として、将来の不測の事態に備えるという合理的な側面も持ち合わせていますが、同時に、過剰な警戒心が新たな成長機会への投資を妨げる結果につながる可能性も示唆しています。 この状況は、設備投資を促す政策が、単なる経済的インセンティブの提供に留まらず、企業の心理的障壁を取り除くためのアプローチも必要であることを示しています。

例えば、政府によるリスク共有メカニズムの提供、国内における成功事例の積極的な情報発信、あるいは過去の失敗から学ぶための支援プログラムなどが考えられます。また、政策の予見可能性を高め、将来の不確実性を低減させるための明確な成長戦略の提示や規制環境の整備は、企業がリスクテイクを「合理的」と判断できる環境を醸成し、投資行動を促す上でより効果的である可能性を秘めています。

 IV. 余剰資金の使途と企業行動の変化 

日本企業の利益剰余金は2010年度から2023年度にかけて大幅に増加しましたが、その間の有形固定資産や無形固定資産の増加は限定的でした [User Query]。この増加した資金は、主に以下の3つの方向に向かっています。 

自己株式取得の増加 

余剰資金は、株主への利益還元策として「自己株式の取得(自社株買い)」に活用されるケースが増加しています [User Query]。数次にわたる商法改正により自己株式取得の条件が緩和されるにつれて、その取得額は増加し、直近では株式による資金調達額を上回り、上場企業連結では配当金支払に匹敵する額に達しています 。自己株式取得は、配当金支払が安定配当を求められ、その増減が経営責任に直結しやすいのと異なり、比較的機動的に行いやすい特徴があります 。このため、今後も有力な資金使途として位置付けられると考えられます。

 現預金の高水準保有 

余剰資金は「現預金の保有」にも向かっています [User Query]。これは、将来の投資機会に備えるため、または過去の経済危機からの教訓として流動性を確保する目的で増加しているとされています [User Query]。企業は財務の自由度を保とうとする意向が強く、日本政策投資銀行の意識調査によれば、有利子負債が適正水準達成後の資金使途として「一層の有利子負債圧縮または金融資産の増加」を挙げる企業が多いことが示されています 。特に中小企業においては、金融制約の存在が資金余剰と現預金保有を増加させる要因となっていることが分析されています 。 

 海外への積極的な投資 

余剰資金は「投資その他の資産」、特に「国内外の子会社設立や他社の買収など、海外への投資」に大幅に増加しています [User Query]。日本企業は国内での設備投資には抑制的である一方、海外への投資には積極的な姿勢を見せており、これは日本国内よりも海外の方が成長期待が大きいと判断しているためと考えられています [User Query]。対外直接投資は2010年代以降大きく増加しましたが、近年では新規投資が頭打ちになる一方で、再投資の占める割合が拡大していることが確認されています 。大企業の場合、現預金の蓄積は将来の投資機会のための待機資金とみなされることがありますが、その主な使途はM&Aや海外直接投資であり、国内設備投資ではないという実態も明らかになっています 。

 「流動性選好」と「成長機会の海外シフト」の構造化

 日本企業の余剰資金の使途を分析すると、単なる資金の「貯め込み」というよりも、国内の成長機会の不足とリスク回避姿勢の中で、「流動性の確保」と「海外での成長機会の追求」という二つの戦略的選択の結果として資金が配分されている状況が浮かび上がります。これは、国内経済の構造的な課題が、企業行動を通じて資金の海外流出や非生産的な国内滞留を促していることを示唆しています。 この状況は、複数の企業行動から導き出されます。

まず、企業は国内で魅力的な投資先が見つからない、あるいはリスクが高いと判断した場合、株主還元策として自己株式取得を行うことで資本効率を向上させようとします 。同時に、手元流動性を厚く保つことで、予期せぬ経済変動や将来の不確実性に対する備えを強化しています 。これは、過去の経済危機から得られた教訓であり、企業がリスク回避的な行動を取る一因となっています。

さらに、国内市場の成長が期待できないと判断した場合、企業は成長を求めるために海外に活路を見出し、積極的に海外投資を行っています 。 このような行動パターンは、単発の選択ではなく、企業の経営戦略の中に構造化されていると捉えることができます。企業は、国内で投資機会が限定的であるという認識のもと、自己資本を国内の生産的な投資に十分に振り向けず、結果として資金が国内で滞留するか、あるいは海外へと流出しています。この構造化された行動は、国内経済の活性化を阻害する要因となります。国内の投資不足は、生産性向上やイノベーションの停滞につながり、結果として賃金上昇の鈍化や消費の低迷を招くという悪循環を形成する可能性があります。

 したがって、政策は、単に企業に資金を「使わせる」ことを促すだけでなく、国内に魅力的な投資機会を創出し、企業が国内でのリスクテイクを「合理的」と判断できるような環境を整備することに注力する必要があります。これには、新たな成長産業の育成、規制緩和、そして企業の長期的な成長を支援する資本市場改革など、多角的なアプローチが求められます。

 V. 日本経済が持続的な成長を遂げるための課題 自己資本の有効活用と将来投資の不足 日本企業は、積み上がった自己資本を設備投資や研究開発といった将来に向けた投資に十分に活用できていない現状があります [User Query]。 

ROE・PBRの低迷が示す投資家の成長期待の低さ: 

低いROE(自己資本利益率)やPBR(株価純資産倍率)は、日本企業の投資家からの成長期待が低い現状を示唆しています 。投資家の日本企業に対する成長期待が低い背景には、企業が将来に向けた投資姿勢を十分に示していないことがあると考えられます [User Query]。

経済産業省が提唱した「伊藤レポート」はROE向上を提言しましたが、企業の中には、利益(分子)を増やすことよりも、自己資本(分母)を減らすことで見せかけのROEを改善しようとする動きが見られることも指摘されています 。 

 研究開発投資の課題: 研究開発投資は、リスクが高く、投資効果が顕在化するまでの期間も長いため、景気後退局面では民間企業において削減対象となりやすい傾向があります 。将来を見据えた研究開発投資の水準を確保するためには、政府による下支えが重要であり、過去に研究開発費の伸び率が加速した国々(スウェーデン、フィンランド、韓国)では、経済危機の際に政府の負担比率が一時的に高まっていることが確認されています 。日本のR&D/GDP比はバブル崩壊後に低下しましたが、1990年代半ば以降は緩やかな上昇を続けています 。 家計消費の弱さとデフレ志向の影響 国内の設備投資の低迷には、企業が国内市場の低い成長期待を抱いていることが深く関与しており、その背景には家計の消費の弱さがあります [User Query]。

過去の経済的な苦難や人口減少・高齢化といった構造的な要因から、家計は生活防衛意識が強く、「安いもの」を求める傾向が強まっています [User Query]。 物価上昇が続く中でも実質賃金は伸び悩み、コロナ禍からの消費回復は鈍い状況にあります 。特に若年世帯や単身中高年世帯で消費が伸び悩んでいることが示されています 。消費者の行動を見ると、食料や日用品などの日常的な消費を抑制しながら、旅行やレジャーなどの娯楽的な支出には一定の支出を維持する「メリハリ消費」の傾向がうかがえます 。

この結果、企業は新しい製品・サービスを生み出す研究開発よりもコスト削減に注力し、成長が期待できる海外へ投資をシフトさせています [User Query]。

 国内投資の低迷がもたらす悪循環 

このままでは、国内での前向きな投資が弱まり、企業の成長期待がさらに低下し、家計の消費も低迷するという悪循環に陥る可能性があります [User Query]。

実質的な設備投資が低迷すれば、実質的な生産性の低迷などを通じて実質賃金も上がりにくくなり、経済成長の好循環に繋がらないことで、日本経済が長期停滞から抜け出せない可能性が指摘されています 。 

 生産性向上とイノベーションへの影響 

設備投資の低迷は、資本ストックの老朽化と資本生産性の低下を招き、新しい技術を体化した設備の導入を妨げます 。これは、日本企業の国際競争力低下に直結する深刻な問題です 。また、産業界の具体的な人材ニーズが労働市場や教育機関に示されてこなかったこと、イノベーティブな人材を輩出する仕組みの欠如、そして生え抜き主義や年功序列、終身雇用制といった日本型経営・慣行が、事業・人材ポートフォリオの変革やグローバル規模の戦略投資を阻害していると指摘されています 。

 「デフレマインド」と「成長の罠」の深化

 日本経済の課題は、単なる資金余剰や設備投資の低迷に留まらず、企業と家計双方に深く根ざした「デフレマインド」が、国内での投資と消費を抑制し、結果的に「成長の罠」を深化させている点にあります。 この状況は、複数の相互作用する要素から成り立っています。まず、家計の消費の弱さが企業の成長期待低下と国内投資低迷につながり、悪循環を形成するという指摘があります [User Query]。物価高が見られる中でも実質賃金が伸び悩み、家計が生活防衛意識から「安いもの」を求めたり「メリハリ消費」をしたりしている現状が示されています 。これは、家計が将来への不安を抱え、消費を抑制する傾向が強いことを意味します。 同時に、企業は、このような家計の消費行動や国内市場の需要の伸びが見込めない状況を認識しているため、国内での投資を抑制し、コスト削減に注力する傾向を強めています [User Query]。

結果として、企業の資金余剰が設備投資や賃金に十分に振り向けられていないという状況が続いています 。この企業行動は、賃金が上がりにくく、家計の購買力も伸び悩むという循環をさらに強化します。 これらの要素は、単発の事象ではなく、相互に作用し合う「デフレマインド」という心理的・行動的傾向が根底にあることを示唆しています。家計は将来不安から消費を抑え、企業は需要の伸びが見込めないため国内投資を抑制し、コスト削減に注力する。これにより、賃金が上がりにくく、家計の購買力も伸び悩む。

この循環が、日本経済を長期的な低成長に閉じ込める「成長の罠」を形成していると捉えられます。 この分析は、政策が単に金融緩和や財政出動に留まらず、家計の将来不安を払拭し、企業のデフレマインドを転換させるための、より包括的かつ長期的な戦略を必要とすることを示唆しています。

これには、社会保障制度の安定化による家計の安心感の醸成、労働市場改革による賃上げの持続性確保、そして国内における新たな成長産業の育成と明確なビジョンの提示が含まれます。企業ガバナンス改革も、短期的なROE改善だけでなく、長期的な成長投資を促す方向で強化されるべきであると結論付けられます。 

VI. 持続的成長に向けた提言 日本経済が持続的な成長を遂げるためには、企業と政府がそれぞれの役割を果たし、相互に連携しながら好循環を創出していくことが不可欠です。

 企業への提言:成長戦略とリスクテイクの促進 

 自己資本の積極的な活用: 企業は、積み上がった自己資本を、自己株式取得や現預金保有だけでなく、国内での設備投資や研究開発といった将来に向けた生産的な投資に積極的に振り向けるべきです [User Query]。ROEやPBRの向上は、分子である利益の拡大を通じて達成されるべきであり、そのためには大胆な成長投資が不可欠です 。見せかけのROE改善に繋がる自己資本削減は、長期的な企業価値向上には寄与しません。

 事業ポートフォリオの変革とM&Aの活用: GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)といった不確実性の高い成長領域での主導権を握るためのグローバルな投資競争に対応するため、新たな市場を切り拓く成長戦略の実行が不可欠です 。コア事業に専念するためのスピンオフ環境整備や、企業結合・複数企業間連携を後押しする事業環境の検討を進めるべきです 。M&Aは、国内外での事業拡大やシナジー創出の有効な手段となり、特に製造業におけるスタートアップ買収事例のように、大企業の顧客基盤とスタートアップの柔軟な開発力の相乗効果が期待されます 。

 人的資本への投資とイノベーション文化の醸成: 生え抜き主義や年功序列といった日本型経営・慣行を見直し、事業・人材ポートフォリオの変革を進めるべきです 。イノベーティブな人材を輩出し、リスクを恐れず挑戦できる企業文化を醸成することが、新たな価値創造と生産性向上につながります。 

 政府・マクロ経済政策への提言:家計消費の活性化と投資環境整備 

 家計消費意欲の向上: 日本経済が持続的な成長を遂げるためには、家計の消費意欲を高めるような経済状況を作り出すことが不可欠であり、マクロ経済全体の課題として取り組む必要があります [User Query]。実質賃金の持続的な上昇を促す政策、社会保障制度の安定化、そして将来不安の払拭が重要となります 。これにより、家計が安心して消費や投資に回せる環境を整備することが求められます。 

 国内投資を惹きつける政策体系の構築: 

成長分野への誘導: GXやDXといった成長分野への戦略的な投資を後押しするため、政府はこれまでになかった規模と形式の支援策を展開すべきです 。研究開発投資については、リスクが高く民間企業が削減しやすい局面において、政府による下支えが特に重要であると認識されています 。 

 不確実性の低減と予見可能性の向上: 企業が投資を先送りする要因となる不確実性を低減するため、政策の安定性、規制の予見可能性を高めることが求められます 。明確な成長戦略と一貫した政策メッセージは、企業の長期的な投資判断を支援します。

 資本市場改革と企業ガバナンスの強化: 東京証券取引所によるROEやPBR等の資本収益性改善計画のモニタリングや、金融庁によるスチュワードシップ・コードの見直しを通じて、資本コストや株価を意識した経営を推進し、企業経営者による大胆なリスクテイクや成長投資を後押しする制度整備を進めるべきです 。ただし、ROE向上は利益拡大を通じて行われるべきであり、見せかけのROE改善に繋がる自己資本削減には注意が必要です 。 

 中小企業支援の強化: 中小企業特有の課題、すなわち人口減少による内需先細り、経営者の高齢化、事業承継問題に対し、地域経済の活性化支援、デジタル化投資支援、事業承継の円滑化など、きめ細やかな政策対応が求められます 。 企業と政府の協調による好循環の創出 日本経済の持続的成長には、企業が自己資本を有効活用し将来投資を積極的に行うことと、家計の消費意欲を高めるマクロ経済環境の整備が車の両輪として機能することが不可欠です [User Query]。政府は、経済安全保障や環境・エネルギーといった国が主導する問題において、企業がリスクを取り、中長期的なビジョンを持って投資できるような「先見性」と「ビジョン」を示すべきです 。企業は、この政府のビジョンと政策的支援を信頼し、国内での成長機会を追求する姿勢を強化することで、家計の所得向上と消費拡大につながる好循環を創出することが期待されます。

 VII. 結論 日本企業の資金余剰は、バブル崩壊後の負債圧縮から始まり、リーマンショック以降は国内成長機会の不足とリスク回避的な流動性確保、そして海外への成長機会の追求へとその性質を変化させてきました。この資金が国内の設備投資や研究開発に十分に振り向けられていないことは、低い成長期待、不確実性、過去の失敗経験、そして家計の消費低迷に起因する「デフレマインド」と「成長の罠」を深化させています。 持続的な経済成長を実現するためには、企業は積み上がった自己資本を国内の将来投資に積極的に活用し、事業ポートフォリオの変革や人的資本への投資を通じてイノベーションを追求する必要があります。同時に、政府は家計の消費意欲を高めるマクロ経済環境を整備し、成長分野への戦略的誘導、不確実性の低減、資本市場改革、そして中小企業支援といった多角的な政策を通じて、国内投資を惹きつける魅力的な環境を構築することが求められます。企業と政府が協調し、長期的な視点に立ったリスクテイクと成長戦略を実行することで、日本経済は新たな好循環を生み出し、持続的な発展への道を切り拓くことができるでしょう。

2025年11月20日木曜日

資本コスト経営と心理

 月末に、かなり遠方に、母親同伴で、面接授業に行く。

(なぜ母親同伴か、と言えば、ちょっと放ったらかしにすると、母親が萎えちゃうから。

と、言っても俺の障害年金で最終的には母親の分も含めて旅費を賄うのだが。)

で、当然、遠方まで行くからには、ということで、ちょっと面接授業に多くを期待しすぎていた面は否めない。

講師の先生も、受講生がどこから来たのかは把握してるから、群馬からわざわざ来て、つまんないからって、1限でバックレられたら、当然、さすがにこっちとしても、申し訳ない。

そんなわけで、事前に色々と勉強したりとか、講師の先生にメールでコンタクトを取ったりとか、やらんでも良いことまで、やった。

それで、ちょっと先生からレスポンスがないものだから、ちょっとヒネくれていた。

先生が講演している動画とかも拝見したし、お話は間違いなく面白い。

ただ、ちょっとメールにレスポンスがないことで、俺が勝手にヘソを曲げてしまっていた。

そんなこんなありつつ、友達に連絡したら、相手の立場も考えるように、と直言してくれた。

確かに、俺は当該面接授業に、多くを求めすぎていた。

それは、授業に参加する、つまり、遠方まで出向くコストに見合ったリターンを求める、という、当たり前のことに加えて、いわゆる「資本コスト」までいつの間にか計算に入れていた、ということ。

どういうことか、というと、コスト(旅費)に見合ったリターン(満足度)を求めるのはもちろんのこと、周囲からの「期待値」に応えなきゃいけない、という無意識の心理が働いていたから。

その「期待値」まで勘定に入れると、いきおい、面接授業に対する期待値がいやが応にも増して、一人芝居を演じてしまっていた。

しかし、「周囲からの『期待値』」というのは、結局、そうやって直言してくれる友人たちに対する、言わば「経営責任」みたいなもんだから、「周囲」が満足してくれるなら、単に面接授業が面白ければ、それでいいのだ。

そして、「周囲」、つまり友人たちは、俺をリスペクトしてくれる。

だからこそ、激務にもかかわらず、直言してくれる。

だから、単純に面接授業を聞いて、(旅費に見合うくらい)面白ければ、それで何の問題もないのだ。

反グローバリズムと日本経済の課題 Googleの生成AIが詳細なレポートを作成してくれました。 (再掲)

 


日本における反グローバリズム経済の構造的制約と内需拡大の必然性:政策研究報告書



I. イデオロギー的枠組みとロドリックのトリレンマが課す制約


神谷代表の発言に見られるような、国家主権を優先し、グローバリズムの急激な流れに制限をかける政策転換は、特定の有権者層に好意的に受け止められているが、その経済的な実現可能性は厳しく分析されなければならない。この反グローバリズムの姿勢は、国際経済学におけるダニ・ロドリックの「政治的トリレンマ」が提起する構造的なトレードオフに直面する。


1.1. 日本の反グローバリズム経済前提の定義


現在注目されている反グローバリズムの経済的議論は、グローバルな効率性よりも国家主権と文化的な独自性を優先する、明確な「日本ファースト」ドクトリンに基づいて構築されている。このドクトリンは、ヒト・モノ・カネの急激な国際移動を制限することで、国内経済の自立とレジリエンス(強靭性)を確保しようと試みるものである。

政策の柱として挙げられるのは、高度に制限的な外国人政策である。具体的には、外国人に対する生活保護の支給停止、公務員への採用制限、そして外国人政策を一元的に管理するための「外国人総合政策庁」の設置などが主張されている 1。これらの措置は、流入する外国人労働力や移民に対する制限を強めることで、国家的な社会保障制度と国内秩序を守ることを目的とする。

その経済的な代替策として提案されているのが、徹底した内向きの投資戦略である。反グローバリズムの解決策は、外部からの労働力や資本に依存せず、国債発行を財源とした「教育国債」による日本人への集中的な人的資本投資に焦点を当てる 2。この戦略は、経済的困難を抱える日本国籍保有者を優先した教育関連給付金の拡充や、0歳から15歳の子供に対して月10万円の子育て・教育給付金を支給するといった、大規模な財政措置を伴う 2。これらの施策は、長期的に外国人労働力や技術輸入を代替できる、高付加価値な国内人材を育成することを目的としている。


1.2. 日本におけるダニ・ロドリックの政治的トリレンマの現実


ロドリックの定理は、深い経済統合(Deep Economic Integration)、国民国家主権(National Sovereignty)、そして民主政治(Democratic Politics)の三要素を同時に追求することは不可能であると主張する。日本の反グローバリズムへの政策転換は、明確に主権と民主主義を選択し、その対価として深い経済統合、すなわち「ヒト・モノ・カネの急激な移動」を制限する道を歩むことを意味する。

このトレードオフの最も深刻な影響は、経済効率性の犠牲である。外国人材や資本の流入を厳しく制限する決定 1は、比較優位やグローバルな労働力プールから得られる即座の効率性向上を根本的に否定する。この構造的なショックを相殺するためには、国内でそれと同等か、それ以上に強力な経済的カウンターフォースを即座に生み出すことが不可欠となる。

この政策路線で最も留意すべきは、政策対応の時間軸の不一致(Intertemporal Mismatch)がもたらすリスクである。外国人労働力の制限は、足元の深刻な人手不足に対する即座の供給サイドの緩和策を排除する 1。一方で、教育国債による教育投資は、長期的な生産性の向上を目指すものの、その成果が十分に現れるまでには15年から20年を要する。この労働力供給の制限と国内資本育成の成熟期間の長さが重なり合うことで、経済は深刻な生産性の谷間(プログレッシブ・トラフ)に陥る。少子高齢化による社会保障費の増大と歳入の停滞が続く現状において、この生産性の谷間は財政の崩壊リスクを著しく高める。ユーザーが指摘する「タイタニック号」の運命は、この時間軸のギャップを埋めることができなければ現実のものとなる。

また、主権の確保は単なる国境管理に留まらない。真の経済主権を確保するためには、多国籍企業(GAFA)に対して効果的に課税し、外国資本への依存なしに自国通貨を安定させる能力が求められる。これらは、次に述べるデジタル赤字や円の安定化といった課題に直結する。

政策的な観点から、この反グローバリズムの道を選択した場合の構造的なトレードオフと、それを実現するために求められる政策メカニズムを以下に示す。

Table 1: ロドリックのトリレンマを日本における反グローバリズムの選択に適用


政策選択軸

反グローバリズム下での目標

経済的・財政的トレードオフ

求められる政策メカニズム

深い経済統合

制限(労働・資本)

競争的な資本・労働力流入の喪失。サプライチェーンコストの顕著なインフレ。

ニッチな高付加価値製造業への主権的投資。国内回帰(Reshoring)補助金。

国民国家主権

最大化

国境、通貨、デジタル課税における厳格な統制が必須。

一方的デジタル税(UDTs)の導入。資本規制。人的資本への加速的な投資 2

民主政治

維持

義務的な再分配と構造改革による国内摩擦の増大 3

透明性の向上。ターゲットを絞った社会保障制度。教育国債などの高い財政負担への国民的合意形成。


II. 外部依存の緩和:三つの重大な不足


反グローバリズムモデルの下では、ヒト(労働力)、カネ(資本、観光)、そして通貨安定という、外部に依存していた三つの要素を国内資源で代替する必要がある。この代替が不十分であれば、経済は深刻な構造不況に陥る。


2.1. 労働力の指令(ヒトの移動):外国人労働者の国内人的資本による代替


外国人労働者の受け入れを厳しく制限する政策目標 1は、現在の日本の経済的現実、特に労働力不足という最大の問題と正面から対立する。このため、国内での代替手段の急進的な加速が避けられない。

現在の日本では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に必要なICT人材が極めて不足しており、多くの企業(ほぼ6割以上)が熟練したデジタル人材の不足を報告している 4。この危機的な状況下で、外国人専門人材の流入を断つことは、デジタル危機の解決を自ら遅らせる行為となる。デジタル専門知識は国際的に流動性が高いため、参入を制限することは、高付加価値な国際的なデジタル企業にとっての日本の魅力度を低下させ、結果として、外国技術(GAFA)への依存を不要なほど長期化させる要因となる。

この労働力不足を補うために、反グローバリズムの枠組みは、構造的な再訓練と教育改革への依存を強めざるを得ない。具体的には、「第四次産業革命を牽引する高度人材育成」や、既存の労働者に対する再教育・再訓練の機会提供に集中的に投資する必要がある 3

教育国債に依存した政策 2は、長期的に献身的な高スキル人材を国内で育成することを目指している。しかし、この財政的な機動が正当化されるのは、長期的な生産性のリターンが、債務の即時的な利払いコスト、および労働力不足から生じる短期的な経済的損失を上回る場合に限られる。反グローバリズムは、労働力の問題を市場原理(外国人の賃金支払い)から、国家のバランスシート上の債務(教育債務、補助金)へと転嫁させる、根本的な労働市場の財政化を意味する。その長期的な実現可能性は、この財政支出が生み出す生産性向上カーブが指数関数的であるかどうかにかかっている。


2.2. 資本、観光、そしてデジタル赤字の相殺(カネの移動)


外国人観光客はこれまで、重要な外貨獲得源として機能し、日本の国際収支を安定させ、特に構造的な貿易赤字(デジタル赤字を含む)の一部を相殺する上で決定的な役割を果たしてきた。反グローバリズム的な「日本ファースト」の姿勢が、外国人観光客の流れを排除または厳しく制限する場合、この重要な経済安定装置が失われることになる。

インバウンド収入の喪失シナリオでは、経常収支の黒字幅は大幅に縮小するか、あるいは赤字に転落し、円に対する下押し圧力がかかる。この不足分は、国内の資本創出か、あるいはグローバル統合を制限している状況下で極めて困難な、急進的な輸出成長によって補われなければならない。

ユーザーが指摘する「もはやかつての力がない円」を安定させる課題は、さらに深刻化する。資本流入を制限し、かつ国内で教育国債や補助金を通じてマネーサプライを増加させる政策を、対応する生産性の向上が伴わないまま実施すれば、さらなる通貨安を招き、輸入インフレを加速させ、国内の購買力を一層削り取ることになる。これは、反グローバリズム政策が、通貨リスクを増幅させる高いリスクを内包していることを示している。もしこの財政出動が即座の生産性向上につながらなければ、インフレ期待が急激に高まり、円への信頼が損なわれ、資本逃避を招き、財政的な「タイタニック」の軌道を加速させることになる。


III. デジタル化の脆弱性:GAFA依存と主権的課税


日本経済のデジタル依存、特にGAFAに代表される多国籍デジタル企業への依存と、それに伴うデジタル赤字は、経済主権に対する中心的な脅威である。反グローバリズムの国家が財政的にこの脅威を無力化するためには、課税権の確保が不可欠となる。


3.1. デジタル依存の深さとデジタル赤字


日本の経済は、製造業や伝統的なサービス業に強く依存しているため、構造的に外国のデジタルインフラ(クラウドサービス、OS、AIアルゴリズム)に依存している。この依存は、デジタルサービスの支払い(輸入)が、デジタル関連の輸出を大幅に上回る構造的なデジタル赤字を生み出しており、国家資本の流出源となっている。これは、財政的な自律性を脅かす核心的な問題である。


3.2. GAFAへの課税:主権確保のための手段


多国籍デジタル企業に対する効果的な課税は、国家の税基盤を確保し、資本流出を相殺するために極めて重要である。

現行の国際課税制度は、ITの発展により生じた問題に対応しきれていない。GAFAに代表される多国籍企業グループは、市場国に物理的な拠点を有していない場合、現行制度では市場国で課税されないという問題が存在する 5。国際課税の伝統的な原則を見直し、価値が創造される場所(市場国)での課税を可能にする必要がある 6

国際的な枠組みであるOECDの「第1の柱」は、この問題に対処しようとするが、その進展は遅く、政治的な妥協の産物である。第1の柱の制度設計においては、税収拡大を企図するEUと、「GAFA狙い撃ちは認めない」という米国の立場との対立が存在し 5、最終的にはITサービスだけでなく、ブランド品などの「消費者向け事業」も対象とされた。しかし、消費者向け事業の課税詳細は、多くの場合、納税額がゼロになり得る制度設計となっている 5

反グローバリズムの要請(主権の最大化)と、失われた観光収入を相殺するという財政的な緊急性を考慮すると、緩慢で妥協的なOECDの合意に従うだけでは不十分である可能性が高い。強固な反グローバリズム政権は、日本市場で生み出されたGAFAの利益から迅速に歳入を得るために、地政学的リスクが高い**一方的デジタル税(UDTs:Unilateral Digital Taxes)**の導入を検討せざるを得ないだろう。


3.3. 政策経路:国内技術レジリエンスの構築


デジタル赤字の根本的な解決には、財政政策と並行して、外国からのデジタルサービス輸入の必要性を低減するための産業政策が求められる。

国内技術の自給自足を促すためには、日本が開発したクラウドサービスやAIサービスに対する戦略的な政府調達と、実質的な長期的な研究開発(R&D)補助金を組み合わせることが必要である。これにより、競争力のあるネイティブなデジタルインフラを構築することができる。また、この戦略を支えるためには、教育制度改革 2が、これらの主権的なテクノロジープラットフォームを構築するために必要とされる高度なエンジニアを迅速に供給することが前提となる 4

主権の確保は、国際的な課税合意の遅れや妥協を待たず、財政的な自立を優先するために、税制上のリスクを受け入れることを必要とする。OECDの枠組み 5は国際的な受容性は高いが、反グローバリズムの目標とする財政的自立度を達成するには力不足である。したがって、反グローバリズムを貫徹する政府は、UDTの導入による財政安定化を優先し、その結果として生じる可能性のある米国からの貿易報復という地政学的リスクを許容する準備が必要となる。これは「現在の財政安定化か、国際的な貿易摩擦か」という厳しいトレードオフを突きつける。

Table 2: デジタル赤字緩和策:デジタル課税シナリオ比較


課税シナリオ

焦点/目標

期待される歳入効果

地政学的リスク

反グローバリズム日本における実現可能性

A. OECD 第1の柱準拠

市場国への歳入再配分(限定的範囲)。

中程度(緩慢なグローバル合意と最小限の負債設計に依存 5)。

低~中

高い(国際的に許容されるが、緊急の財政ニーズを相殺するには不十分)。

B. 一方的デジタルサービス税 (UDT)

現地消費/データ抽出への課税(積極的)。

高い(赤字ギャップを迅速に埋める可能性)。

高い(米国からの貿易報復リスク)。

中程度(主権の主張が必要であり、反グローバリズムの目標と整合)。

C. 国内技術R&Dインセンティブ

国内代替技術の育成によるデジタル輸入削減。

短期では低い。長期的には高い赤字削減効果。

低い

高い(国家産業戦略/人的資本重視と整合 4)。


IV. 避けられない解決策:持続可能な内需拡大戦略


ユーザーが最終的に下した結論—内需拡大こそが唯一の選択肢ではないか—は正しい。しかし、この内需拡大は、厳しい財政的・人口学的制約の下で持続可能であるために、極めて戦略的かつ生産性駆動型でなければならない。


4.1. 生産性駆動型の需要創出のための財政戦略の再構築


反グローバリズム環境下での財政赤字支出は、単なる即時的な消費刺激に終わってはならない。これは、債務比率を安定させるための長期的な生産性向上に戦略的に結び付けられる必要がある。

教育国債 2の使用は、単なる負債としてではなく、国家生産性へのレバレッジ投資として位置づけられなければならない。支出は、最高の財政乗数効果が期待できる分野(例:科学技術、人間中心の仕事 3)に精密にターゲットを絞る必要がある。

高付加価値の財政乗数を実現するためには、国内の生産能力、効率性、社会のレジリエンスを直接改善する公共事業や補助金(例:デジタルインフラ、医療の自動化、分散型再生可能エネルギー)に優先順位を置く必要がある。


4.2. 再分配、賃金上昇、そして消費の安定化


持続的な内需は、消費性向の高い強力で広範な中間層に依存する。人口減少が進む中、一人当たりの需要を大幅に増加させることが必須となる。

ICT投資が加速し、「より高度なルーティン業務」が機械に代替される(オートメーション・リスク) 3に伴い、効果的な再分配政策は、影響を受けやすい層(非正規労働者、女性、低教育水準者)を保護しなければならない。政策は、社会保障セーフティネットを強化し、再訓練やリスキリングの機会を広範に提供する必要がある 3

さらに、生産性の向上が確実に賃金上昇につながるよう、賃金安定化策を導入することが不可欠である。これは、生産性の利益が資本側(企業)にのみ捕捉され、需要の停滞を招く傾向に対抗するためである。


4.3. 内部代替戦略:労働力・スキルギャップの橋渡し


内需拡大の成否は、外国人労働者の制限によって生じた労働力不足(セクションII)によって根本的に制約される。

移民制限によって生じた10年から20年の労働力ギャップを埋めるため、日本は歴史的な水準を遥かに超えるペースでオートメーション(ICT投資)を加速させなければならない 3。これにより、定型的なタスクにおける人間労働への依存度を最小限に抑え、新しく教育された労働力を「人間にしかできない仕事」 3に解放する必要がある。

教育と生産性のフィードバックループの確保が極めて重要となる。大規模な教育投資(例:月10万円の補助金や多様な学校選択肢 2)は、迅速に高付加価値の経済活動に転換されなければならない。もし教育システムが求められる専門性の高い人材を速やかに生み出せなければ、教育国債の債務負担はデフレ的圧力となり、ユーザーが危惧する財政破綻を招くことになる。

Table 3: 内部代替戦略:労働力/スキルギャップへの対処


特定されたギャップ

不足の原因

反グローバリズム政策の解決策

必要な加速率(推定)

短期的な経済リスク

労働力供給ギャップ

外国人労働者の制限 1

オートメーション/ICT投資 3

現在のレートを200%以上上回る(人口減少と移民損失を相殺するため)。

サプライチェーンのボトルネック。設備投資コストの増大。

デジタルスキルギャップ

既存の不足 4

教育国債/フリースクール 2

5~10年以内に十分なシニア専門人材を育成する必要がある。

教育資源の誤配分による高い機会費用。生産性リターンの遅延。

国内需要ギャップ

人口減少/賃金低迷

再分配/賃金安定化 3

一人当たり消費を年率2~3%で上昇させる必要がある。

生産性向上を伴わない場合のインフレ圧力(セクションIVの分析)。

この内需拡大戦略は、本質的に高いインフレリスクを伴う高リスクの金融的賭けである。補助金による流動性の注入は、労働力供給が制限された環境(反グローバリズムによる供給制約)では、一般的にコストプッシュ型インフレを引き起こす。このインフレが、実質的な生産性向上に先行した場合、それは逆進的な課税として機能し、消費を損ない、通貨を不安定化させる。

さらに、少子高齢化による財政状況の厳しさが指摘されているように、人口が減少する経済では、伝統的な財政乗数が低下する。持続可能な内需を達成するためには、総量ではなく、一人当たりの消費と生産性の増加が異常に高くなければならない。これは、教育国債 2の生産性リターンが、負債コストだけでなく、人口動態による経済的重荷をも相殺する水準、すなわち天文学的な投資収益率を要求されることを意味する。


V. 政策の統合と結論:トレードオフの航海



5.1. 反グローバリズムへの転換が伴う高いコスト


反グローバリズムへの政策転換は、ロドリックのトリレンマを理論上は満足させる(主権を最大化する)ものの、その経済的存続可能性は、三つの並行した、かつ極めてリスクの高い政策オペレーションの即時的かつ完璧な実行に依存する。

  1. 即時的な財政主権の主張(デジタル課税): 歳入を安定化させるため、一方的デジタル税(UDTs)の導入を断行し、それに伴う貿易報復という高い地政学的リスクを許容する(セクションIII)。

  2. 抜本的なオートメーションと代替: 移民制限によって生じた10年から20年の労働力供給ギャップを埋めるため、ICT導入を歴史的なペースを遥かに超えて加速させる(セクションII)。

  3. 高乗数効果のある債務投資: 教育国債 2が、負債コストと深刻な人口動態の重荷の両方を上回る生産性リターン(知的財産、高スキル労働力)を生み出すことを確実にする(セクションIV)。

これらの政策のうち一つでも失敗すれば、持続的なインフレ、制御不能な債務コスト、そしてユーザーが危惧する財政的な破綻が急速に現実のものとなる。


5.2. 持続可能な主権のための統合政策提言


反グローバリズム経済の安定化のための政策提言は、単なる支出増ではなく、生産性主導に中心を置いた、極めて規律ある多角的戦略でなければならない。

ユーザーの「どうにかして内需を拡大させる以外選択肢はないのではないか?」という問いに対する分析的な結論は、**「戦略的な主権債務によってファイナンスされ、積極的な主権的課税によって担保された、生産性主導の内需拡大」**こそが、財政崩壊を回避しつつ反グローバリズムの目標を達成するための唯一の道である、という点で肯定的である。

これは、政府が短期的な財政の安定化(UDT)と、長期的な構造変革(教育国債)を同時に、しかも極めて速いペースで推進することを要求する。特に、教育投資 2の成果が経済全体に波及するまでの間、労働力の代替を可能にするための技術革新(オートメーション)への投資 3は、国家の最優先事項としなければならない。


5.3. 最終評価:タイタニックの運命を回避するために


「タイタニック号」の運命を回避するには、政府は即座に行動し、主権リスクと債務負担を受け入れなければならない。この債務負担は、未来の、まだ証明されていない国内人的資本の生産性によってのみ正当化される。反グローバリズムへの転換は、経済効率性を犠牲にするというロドリックの定理に従った選択であり、その代償として、国内の構造的なリバランスに失敗すれば、財政的な沈没は不可避となる。したがって、この道を選択することは、極限の規律と、予測不可能な国際的な報復(UDT)に対する覚悟を必要とする、国家的なハイリスク・ハイリターンの戦略であると評価される。

引用文献

  1. 参院選の注目点③【外国人政策】:共生社会の実現と外国人労働の活用, 10月 15, 2025にアクセス、 https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20250710.html

  2. 参政党の政策カタログ一覧, 10月 15, 2025にアクセス、 https://sanseito.jp/political_measures_2025/specific_policies/

  3. 反グローバリズム再考: 国際経済秩序を揺るがす危機要因の研究 「世界経済研究会」報告書, 10月 15, 2025にアクセス、 https://www2.jiia.or.jp/pdf/research/R01_World_Economy/JIIA_world_economy_research_report_2020.pdf

  4. 令和3年版 情報通信白書|デジタル・トランスフォーメーションにおける課題 - 総務省, 10月 15, 2025にアクセス、 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112490.html

  5. OECDのデジタル課税案と今後の動向 2020年10月08日 | 大和総研 | 吉田 智聡, 10月 15, 2025にアクセス、 https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/tax/20201008_021819.html

  6. 提言・要望 - 日本貿易会, 10月 15, 2025にアクセス、 https://www.jftc.jp/monthly/archives/001/202010/1e17bbc9df18b42f179bb6e9be127dd5.pdf

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