「不道徳的倫理学講義」 古田徹也 ちくま新書
総じて、運を自他の人生から
切り離さずに
引き受けることは、
運の肯定に伴う
幾多の危険を抱え込むことに
なるのである。
しかし、かといって、
運のなかに生きる人間への
眼差しをまるごと
放棄すれば、
人間の輪郭のほとんどを
見失うことになる。
というのも、
我々の人生とは、
運の産物が
不断に織り込まれた
網の目に
ほかならないからだ。
はかれないもの、はかないものが
あってこそ、
我々の生に
光や闇が
もたらされ、
陰影が与えられる。
本書では全体を通じて、
この点を度々
確認してきたつもりである。
運の肯定と否定の間
ー
人間について考えることは、
鋭く切り立った尾根の
上を
歩くような
危うい道のりである。
しかも、
我々はその営みに関して、
いまだ
初心者に過ぎない。
p.347
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