2025年3月12日水曜日

経常収支ことはじめ (再掲)

質問: 今般の衆議院選挙の結果を受けて、 安倍政権の経済政策が信任され、 結果、 日銀が緩和を継続すれば、 世界経済への 流動性供給の 源であり続けることになり、 特に、 金利上昇の影響を受けやすい アジアの新興市場に 日本発の流動性が流れ込む だろうという指摘もあります。 ここで、松原隆一郎先生は、 「経常収支と 金融収支は一致する」 と書いておられる わけですが、 実際に 物(ブツ)が輸出入される、 という実物経済と、 例えば日銀が 金融緩和で 世界にマネーを 垂れ流して 世界の利上げ傾向に逆行する、 という国際金融の話を、 同じ土俵で括るのが適切なのか、 という疑問が生じました。 回答: 経常収支は 一国で 実物取引が完結せず 輸出入に差がある ことを表現する項目です。 日本のように それが黒字である (輸出が輸入よりも大きい)のは 商品が外国に売れて、 外国に競り勝って 良いことのように 見えるかもしれませんが、 別の見方をすれば 国内で買われず 売れ残ったものを 外国に引き取ってもらった とも言えます。 国内では 生産し カネが所得として 分配されていて 購買力となっているのに 全額使われなかったのですから、 その分は貯蓄となっています。 つまり実物を純輸出しているとは、 同時に国内で使われなかった 貯蓄も 海外で 使わねばならないことを 意味しているのです。 こちらが金融収支なので、 「経常収支と 金融収支が一致する」 のは同じことの裏表に過ぎません。 そこでご質問は、 「日銀が国債を 直接引き受けたりして 金融緩和し続けている。 このことは 経常収支・金融収支と どう関係があるのか?」 ということになろうかと思われます。 けれども日銀は バランスシートという ストックのやりとりをしており 経常収支・金融収支は フローのやりとりなので、 概念としては次元が異なります (「スピード」と「距離」に相当)。 すなわち、 金融収支はフローであり、 日銀の金融緩和はストックなので、 同じ水準では扱えないのです (スピードに距離を足すことはできない)。 しかし ストックとフローにも 影響関係はあるのではないか という考え方も確かにあり、 そもそも 一国内に限って それを金融資産の需給 (ストック) と 財の需給 (フロー) が金利で結ばれるという 考え方を示したのが ケインズの 『雇用・利子・貨幣の一般理論』でした。 とすれば その国際経済版が 成り立つのかは 重要な問題ではあります。 この論点は 多くの研究者が気になるようで、 奥田宏司「経常収支,財政収支の基本的な把握」 www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/ir/college/bulletin/Vol.26-2/09_Okuda.pdf が論じています。 参考にしてください。  https://jp.reuters.com/article/japan-economy-idJPKCN1QP0DX

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政治学入門@三島レポートその13 (再掲)

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