2023年10月22日日曜日
日経新聞 オピニオン欄 2023/8/29 より抜書 (国際関係論レポートネタ) (再掲)
中国の経済が 苦境に直面している。 不動産が不況に陥り、 金融リスクの 火種が くすぶり出した。 少子化で 低成長を 強いられることは、 中国も分かっていた。 だが、 これほどの 不動産不況や 若者の失業は 想定外だったはずだ。 生活を豊かにしてくれるから、 中国の人々は 共産党の支配を 受け入れてきた。 この前提が崩れたら、 共産党体制がきしんでしまう。 そんな不安が、 習近平政権の 対外行動をさらに 強硬にする恐れがある。 もっとも、 経済の苦境が 中国の行動を 融和的にする 要素がないわけではない。 外国からの 直接投資や貿易が しぼむのを 食い止めるため、 対外交流を 促そうとする心理が 中国に働く面がある。 処理水問題で 日中が 険悪になる前には、 日本に対しても そんな動きがあった。 日本からの 投資を呼び込もうと、 中国の地方政府による 経済ミッションの 来日も相次ぐ。 経済成長が鈍れば、 軍拡などに 回せる 財力の余力も 減っていく。 中国の国力増強は、 思ったよりも 早く頭打ちに なりそうだ。 しかし、 総じて言えば、 国内の「不況」が 深まれば、 中国の対外行動は さらに 強硬になっていくと みるべきだろう。 経済成長が鈍っても、 すぐに 軍拡のペースが 落ちるとは限らない。 想定よりも早く 国力増が 頭打ちになると 分かれば、 その前に 重要な国家目標を 実現したいという 心理も 習氏に働くだろう。 その典型が、 台湾統一だ。 統一の 目標時期を、 前倒ししなければならないと 考える 恐れがある。 失業増などに 伴う 中国国民の 不満の高まりも、 共産党の対外姿勢を 一層、 かたくなにしかねない。 国内で 弱腰批判を 招くわけにはいかないからだ。 重要な 国益が絡む問題で、 中国は 自国の主張を 押し通そうとすると みられる。 その場合、 いちばん 好ましくない シナリオは 習氏への 忠誠心を示すため、 中国政府・軍の 各部門が 競って 強硬策に走る筋書きだ。 福島原発の 処理水問題をめぐる 日本への対応でも、 そんな構図が 透けて見える。 右肩上がりの 「豊かさ」を 与えられなくなったとき、 共産党は 何によって 国民を束ねるのだろうか。 考えられるのが、 一層の大国主義と ナショナリズムだ。 強くて 自信過剰な中国は 困るが、 内憂に苦しみ、 冷静さを欠いた 「巨龍」への 対応は さらに難しい。
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