2023年8月12日土曜日
国土論 三島由紀夫 (再掲)
「三島は
紛うことなく
戦後社会の外部に
立とうとした。
だが、
戦後社会は
自分の外部が
あることを
許容しない。
この拒否は
生の哲学という
全面的な
肯定の所作において
行われているため
ほとんど意識されない。
どんな精神のかたちにせよ、
それが生命の形式であるかぎり
ー体制派も、全共闘運動もふくめてー
戦後的な
生の哲学は
それを是認しうるのである。
三島は
死に遅れたものとして、
戦後社会との
そのような共犯性、
あるいは
戦後社会の総体性にたいして
潔癖ともいえる
反発の意思を
隠そうとしなかった。
三島の精神による抵抗に
意味があるとすれば、
それが
生の哲学の軌跡に
回収されないことであり、
死を如実にはらんでいる
限りにおいてであった。
三島は
自分の精神を
思想的な形象でみたしたが、
そうした彩りは
ただ死の線分に接続する
限りにおいてのみ
精神の形象でありえたに
すぎなかった。」
395ページ 国土論 内田隆三 筑摩書房
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