2022年8月1日月曜日
明治と殉死(再掲)
「負債」の観念を抱かせることが、社会全体を構成し、安定的に維持するための手段であるわけで、交換とか経済的利益は副次的な意味しかないわけです。先ほどお話ししたように、儀式に際して各自の欲望機械を一点集中的に活性化させますが、この強烈な体験を「負債」と記憶させて、大地に縛り付けることが社会の維持に必要なわけです。現代社会にも通過儀礼のようなものがありますし、教育の一環として意味の分からない、理不尽に感じることさえある躾を受けることがありますが、それは、この「負債」の刻印と同根だということのようです。「負債」の刻印が本質だとすると、むしろ下手に合理的な理由をつけずに、感覚が強制的に動員される、残酷劇の方がいい、ということになりそうですね。 <アンチ・オイディプス>入門講義 仲正昌樹 作品社 p.255 特に象徴的なのは、「こころ」において、『先生』がKの頭を持ち上げようとした時に感じた、重さ、そして絶望。その、原罪と言っても過言ではないほどの負債観念が、明治という時代に殉死する、という言葉とともに、読者を明治以降の日本人とともに、日本という大地に縛りつける役割を果たしたと言っても過言ではないだろう。
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