2022年6月16日木曜日

テキトー

ケインズが、自身の理論の論拠としたのは、賃金の下方硬直性、つまり、賃金は、どんなに景気が悪くなっても、ある一定程度で下げ止まる、ということだった。 逆に言えば、賃金が下げ止まるラインがあるからこそ、特に財政政策の有効性があると言えるのではないだろうか? 日本になぞらえて考えれば、雇用の流動化が進んで、いわゆる非正規と呼ばれる働き方が増えた。 もちろん、非正規という働き方自体が悪いわけでもないし、雇用の流動化というアイデア自体は良い側面もあると思う。 しかし、結局は体の良い雇用の調整弁に使われている。 アメリカみたいに、コロナで失業者が大量に発生しても、かえって労働生産性が向上するような社会なら、そういう考え方もアリだろう。 しかし、現実問題として、日本では労働生産性がちっとも上がってない。 これはファクトだ。 話をケインズに戻すと、ケインズが、自分の政策の有効性の根拠としたのが、賃金の下方硬直性、そして、その背後にあるのが雇用の安定性と考えると、これだけ非正規労働が増え、実質賃金がどんどん減っている、これもファクト、こういう状況で、果たしてケインズ的政策の有効性は確かなのか? ウーバーイーツの配達員とか、あれでどうやって一生食ってくというのか? あれも、いや、彼らは個人事業主だから自己責任で、で済まされている。 乗数効果の面から言えば、いくら一時的に可処分所得が増えたところで、雇用の安定性が確保されていないのに、高い乗数効果、つまり政府がいくらバラまいたところで、消費に繋がらないだろう。 インタゲっていう、最先端のアメリカ流経済政策をやってみて、最初だけ景気は良くなったが、結局は失速した。 気づけば、旧態依然とした自民党的バラマキ政策を、外見だけ変えて同じことをやってるだけ。 経済政策というのは、各々の国の実態に即したやり方で考えるべきではないのか? アメリカ社会で通用することが、日本社会でそのまま通用するとは限らない。 特に労働政策においてはそうだ。 労働に対する価値観自体が違うという側面もある。 労働経済学はまだ理論的に洗練されていない。 実態にそぐわない理論が先走るのは、かえって副作用が大きい。

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