「日本銀行は政府の一部だから、国債をいくら引き受けても問題はないとの幼稚な議論が与党内でまかり通っている。それはデフレやゼロ金利が恒常化するという前提で、はじめて成り立つものだ。世界的な金利上昇の圧力で、日銀が際限なく国債を引き受けて金利上昇を防ぐ『財政ファイナンス』の弊害が、円安加速の形で顕在化している。」
1. 序論:『それから』に映し出される明治期の近代化 本稿は、夏目漱石の小説『それから』を題材に、日本の近代化がもたらした状況と、それが個人の経験に与えた影響について考察するものである。特に、経済的豊かさが生み出す「自家特有の世界」への耽溺と、それが最終的に経済の論理に絡め取られていく過程、そしてテオドール・W・アドルノが指摘する、社会の合理化と精神世界における非合理への慰めを求める人々の傾向を、作品を通して分析する。 日本の明治時代(1868-1912年)は、長きにわたる鎖国状態を経て、1853年の黒船来航を契機に世界と対峙し、驚くべき速度で西洋の制度や文化を取り入れ、「近代国家」への道を歩んだ画期的な時代である 。この時期には、鉄道、郵便局、小学校、電気、博物館、図書館、銀行、病院、ホテルといった現代の基盤となるインフラや制度が次々と整備された 。政府は「富国強兵」や「殖産興業」といった政策を推進し、工場、兵舎、鉄道駅舎などの建設を奨励した。また、廃藩置県や憲法制定といった統治制度の変更に伴い、官庁舎や裁判所、監獄などが建設され、教育制度の導入は学校や博物館の整備を促した 。 西洋化の影響は日常生活にも深く浸透した。住宅様式においては、外国人居留地を起点に西洋館が普及し、やがて庶民の住宅にも椅子式の生活スタイルが段階的に浸透した 。食文化においても、仏教の影響で長らく禁じられていた肉食が解禁され、西洋列強との競争意識から日本人の体格向上と体力増強が期待された 。洋食は都市部の富裕層を中心に広まり、カレーライスやオムライス、ハヤシライスといった日本独自の洋食が定着した 。大正ロマン期(1912-1926年)には、西洋文化と日本独自の文化が融合し、「モガ」や「モボ」と呼ばれる若者たちが洋装に身を包み、カフェで音楽や映画を楽しむ「自由でおしゃれな空気」が醸成された 。経済面では、明治後期から軽工業が発展し、日露戦争前後には鉄鋼や船舶などの重工業が急速に発展し、日本の近代化を加速させた 。第一次世界大戦期には工業生産が飛躍的に増大し、輸出が輸入を上回る好景気を享受した 。 『それから』(1909年発表)は、夏目漱石の「前期三部作」の二作目にあたり、急速な近代化が進む日本を背景に、個人の欲望と社会規範の...
企業物価の上昇の割には、消費者物価が上がっていない。つまり、企業が製品に価格転嫁できていない。そうなれば、当然賃金も上がらない。しかも、円安でジワジワと輸入物価は上がる。賃金は上がらないのに、物価が上がれば、労働者は大変だ。このプロセスが不可逆的に進行すれば、日々の生活すら危うい状況になるだろう。
返信削除物価が上昇すれば、通貨の購買力の低下を補うために金利が上昇する、と説明するのがフィッシャー効果だが、日銀が金利を抑圧している状況では、資産を円で持っているより、外貨で保有しようというのが、当然の発想だ。そうすると、潤沢な円資産が日本国債を買い支えている、という構図が崩れる。もし雪崩のように家計部門が資産を海外通貨で保有しようという流れが定着すれば、日本国債価格の値崩れ、金利の急騰が待っているだろう。いよいよ八方塞がりになってきた。
返信削除家計部門が資産を円ではなく外貨で保有しようとする、という言明が奇異に感じられるかもしれないが、簡単なことで、FXなんかが典型例で、普通にCMもしているし、ちょっと小遣い稼ぎのつもりでも、弾みがつけば資産の海外逃避は簡単に起こるだろう。ありえない話では決してない。円安を是正するために利上げしようにも、金利を上げれば、国際価格が暴落するので、それはできない。
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