添削2

第1章 「貨幣経済」の成立――その暴力性と「個人」をめぐる逆説 貨幣というのは、確かにバランスシートに刻印されるものであるけれども、本質的に信用によって無性生殖的に増幅されるものであり、その意味で、起源を持たないものなのかもしれない。いや、そうではない。人気を博した漫画『ナニワ金融道』(注1)で灰原が枷木に、お前が生命保険かけて明石海峡大橋から飛び降りれば、カネができる、と言ったように、貨幣にも暴力的な起源はある。むしろ、貨幣の増幅の仕方が信用によって支えられて    貨幣には暴力的な起源がある ? いるのであって、貨幣の起源自体は明白に暴力的なもので、おおっぴらなものだ。 寓話性に富んだ民話「六部殺し」の伝承(注2)にもあるように、金銭というのは何かしらの罪意識と繋がりがあるのかもしれない。シェークスピアの「ヴェニスの商人」に登場するユダヤ人金貸しのシャイロックも、裁判官から不当な扱いを受けているし、そもそもカネに利子をつけて貸すこと自体が禁じられていたキリスト教社会において、金融業がユダヤ人に半ば押し付けられていた、という事実も(また)、金銭が何かしら罪深いものだ、という意識を示しているのかもしれない。

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