2022年3月7日月曜日

「本来性」というジャーゴン

「本来性」という今やジャーゴン化した隠語が孕む<個>を<全体>へ解消しようとする志向、 とりわけ、これとの連関でよりいっそう顕在化してくるグローバリゼーションと並行的に進む 民族主義、ナショナリズムを初めとする原理主義の台頭が印象的なコメントでした。  ナチ以降のドイツの戦後社会や東欧の動きは、まさにそのもの――かつ、これらに象徴されるように 原理主義的孤立と排他は、皮肉にも文字通り「全球」的に進行しつつあるのでしょうが、わけても 日本の場合は、欧米やイスラムとはまた異なる様相の下、他者との摩擦や葛藤を経由することなく ソフトに進行してゆくので、いっそう恐ろしいのかもしれませんね。  ふと、村上春樹の『1Q84』でおそらく作者からも読者からも最も愛されているヒロイン「青豆」が 憎悪しながら傾倒しているとしか評しようもない「証人会」――明らかに「???の証人」をモデルとした 宗教的原理主義のことを想起していました。時代を生きる以上、否応なく巻き込まれざるをえない グローバリゼーションの嵐が強いる均一化に対して、東西を問わず、人はこんな形で抗い、憩いを求めるのだ ろうか、と。『1Q84』は、明らかに「証人会」への依存と異性愛への依存を重層させ、近代の恋愛が祖型とする 所謂<対>なるものへの志向が最たる原理主義の1つの姿ではないか、とその限界を問うているような気がします。  「本来性」とは、まさに「起源」の捏造でもあるわけですね。  アドルノのハイデガー批判は有名なので何となく知ったような気になっていたのですが、きわめて具体的、明晰な形で 改めて説明、啓蒙を頂戴したようで、良い勉強をさせて頂きました。  有り難う。

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