2023年2月2日木曜日
法治主義を否定する官房長官と、回転すしバカッターと、どっちが悪質? 行政法 (再掲)
質問:今年(2018年)8月21日に、菅官房長官が、記者会見で、携帯料金を4割値下げする、と発言し、auをはじめとする携帯会社の株価が一時下落しました。
要件としては、
①官房長官は
行政庁か
②官房長官の
記者会見は
行政行為か
③損失を被った
株主の
原告適格、
の3つと考えられます。
一番の論点は
②の
官房長官の
発言は
行政行為か、
と思われます。
仮に取消訴訟で勝って、
官房長官の発言が無効とされたとしても、
株価が戻るかは不確実で、
損害賠償もしてもらえないとなれば、
わざわざ訴訟を提起するのは
デメリットのほうが大きくなってしまいます。
文字数制限の都合で、論理が飛躍している部分がありますが、ご容赦ください。
ご回答:ご質問ありがとうございます。
まず①との関係では、
官房長官は
行政庁には当たりません。
行政庁とは、
行政主体
(ご質問との関係では国)
のために
意思決定を行い
これを表示する権限を有するものをいう
(印刷教材45頁)
のですが、
携帯電話事業に対する
事業認可の権限を
もっているのは
総務大臣でして、
官房長官が
料金設定についての発言をして
これが料金設定に影響を及ぼすとしても、
それはあくまでも事実上のものだからです。
また、質問事項②
については、
行政行為
とは、
行政庁が法律に基づき
一方的に
国民や住民の
権利義務の
個別的・具体的な内容を
直接確定する
行政機関の活動形式をいう
(印刷教材70頁参照)
わけですが、
官房長官の記者会見は、
法律に基づき
国民や住民の
権利義務の
個別的・具体的な
内容を
確定するもの
ということが
できませんので、
行政行為に該当する
ということが
できません。
さらに
質問事項③
に
つきましては、
原告適格以前に
問題となることがあります。
それは、
官房長官の発言が
取消訴訟の対象となる
「行政庁の処分」
(行訴法3条2項)
の
要件を満たさない、
ということです。
つまり、
「行政庁の処分」
とは、
「公権力の主体
たる
国又は公共団体
が
行う行為のうち、
その行為によって
直接国民の
権利義務を形成し
又はその範囲を
確定することが
法律上
認められている
ものをいう」
と
されている
(印刷教材170頁参照)
のですが、
官房長官による
記者会見での発言は、
国民などの
権利義務の
個別的・具体的内容
を
確定するという
法的な効果を発生させるもの
ではないので、
「行政庁の処分」
という
要件を満たしません。
したがって、
損失を被った株主の
原告適格が
あるかないか、
ということを
問う以前に、
そもそも
質問にある
発言
は
取消訴訟で争う
ことができる
対象には
当たらない、
と考えられます。
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