菜根譚

 椅子に深く、身体を沈める。

張り詰めていた世界が、ふわりと解ける。

今日浴びたノイズも、地上の執着も、

窓の外を流れる星の海へ、一粒ずつ置き去りにすればいい。

冷えたしずくを、ひと口。

鋭い刺激。その奥に、とろりと溶け出す密やかな甘み。

苦みを知る舌に、それは優しく、どこか懐かしく染み渡る。

すべてが燃え尽きたあとに残る、清らかな灰。

何にも染まらないその白さを抱いて、

列車はただ、静寂の深淵へと進んでいく。

ふと漂う、金木犀の芳しい予感。

それは、膨大な宇宙のなかで、

私という「個」を繋ぎ止める、唯一の道標。

澱(おり)は沈み、心はただ、透明に。

終着駅などは、もうどこにもなくていい。

この心地よい空白こそが、私の居場所だから。

私は、私を、新しくする。

おやすみなさい。

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