2023年8月12日土曜日

ルカーチ メモその23

もしもルカーチの考察が ここまでで、 教養小説を讃えることで 終わっていたなら、 たんなる ご都合主義的な 折衷にとどまってしまっただろう。 それを扱った 最後の節は、 紙数も少なく他の箇所と 比べて 説得的とは 言いがたいが、 ルカーチが 指し示そうとしていたことがらならば 判る。 彼によるなら、 トルストイにあっては、 文化と自然がまったく 断絶した層をなしている 点で、 自然もが文化でしかない 西欧世界と分かたれる。 トルストイによって 描かれた 自然のなかに、 ルカーチは 小説の世界を 突き抜ける あらたな 叙事詩への ひとつの 可能性を予感する。 だがそれは同時に、 予感にとどまるもので あることも 確言されていた。 212ページ

0 件のコメント:

コメントを投稿

曽根崎心中 (再掲)

愛という感情が日本の歴史上にも古くから存在していたことは、 源氏物語にも書かれていることで、わかる。 しかし、 日本の宗教観念には、愛を裏打ちするものがない。 改行(節目節目で改行がある方が効果的。以下、同じ。) 曾根崎心中は、 男が女郎をカネで身受けしようとするが、...