「室町将軍の権力ー鎌倉幕府にはできなかったこと」(朝日文庫 本郷恵子)
を読んでます。
本郷和人先生の奥さんであり、
職場の上司でもあるそうです。
文庫本だから
高くないし、
内容も
読みやすい。
旦那さんが
鎌倉時代を専門としていて、
奥さんは
室町時代の専門家であるようですね。
本郷和人先生の
「北条氏の時代」も
いい本でしたね。
値段から言っても、
内容的にも
コスパ抜群でした。
日本中世史がわかんねー、と
モヤモヤしていた原因がやっと
わかったんだが、
いわゆる
ご恩と奉公っていう関係で、
具体的には
土地を安堵してもらうことがご恩なわけだけど、
結局それってお金に換算するといくらなの?
というのがわからなかった。
と、いうのは、
具体的に金額に換算してもらわなかったら
ご恩が具体的にどれくらいに相当するのが
わからないじゃないか、
と(漠然と)思っていた。
しかし、これは
ある意味愚問だった。
なぜなら、
明治期の地租改正まで、
土地の価値は
基本的に
米の収穫量で決まっていたのだから。
そして、
江戸時代においては、
わざわざ
農民から徴税した米を、
金銭に替えて武士に俸給していたのだから、
現在と同じ感覚で
捉えてはいけない。
とはいえ、
鎌倉時代でも、当然のごとく
土地のランク付けというものは
あったのだろうから、
金銭以外の方法で
評価していたのだろう。
それはやはり、土地の収益力、ということになるんだろう。
ここで勘違いしてはならないのは、
鎌倉時代に、
ちょうど
モンゴル帝国に南宋が滅ぼされると、
大量の宋銭(銅銭)が日本に流入し、
未発達ながらも
貨幣経済が浸透し始めたこと。
室町時代にはさらに
土倉などの
金融業者が発達することは
周知の通りだが、
それは
この本を読み進めてから考えよう。
とはいえ、
「北条氏の時代」を
読んだ限りでは、
土地の売買も普通に行われていたし、
対価が貨幣だったかまでは記憶にないが、
そもそも
鎌倉幕府の存在意義の柱のひとつは、
武士の土地争いを、
裁判をちゃんとやって確定させることにあったのだから、
単純に
ご恩に報いていただけ、とは到底言えないだろう。
こうやって
地道に文献を読んで、
粘り強く
積み重ねていって、
わかった!
と思えるのが
ガクモンの醍醐味ですね。
・・・うーむ。
これは大変な本だぞ。
室町時代の核心を突いている。
この内容が
1000円もしない値段で手に入るのは、
良心的としか
言いようがない。
・・・こりゃ800円の内容じゃないよ。
質・分量ともに、
相当な覚悟で読まないと、
軽い気持ちで
読んだら
大変なことになる。
相当気合い入れないと。
1. 序論:『それから』に映し出される明治期の近代化 本稿は、夏目漱石の小説『それから』を題材に、日本の近代化がもたらした状況と、それが個人の経験に与えた影響について考察するものである。特に、経済的豊かさが生み出す「自家特有の世界」への耽溺と、それが最終的に経済の論理に絡め取られていく過程、そしてテオドール・W・アドルノが指摘する、社会の合理化と精神世界における非合理への慰めを求める人々の傾向を、作品を通して分析する。 日本の明治時代(1868-1912年)は、長きにわたる鎖国状態を経て、1853年の黒船来航を契機に世界と対峙し、驚くべき速度で西洋の制度や文化を取り入れ、「近代国家」への道を歩んだ画期的な時代である 。この時期には、鉄道、郵便局、小学校、電気、博物館、図書館、銀行、病院、ホテルといった現代の基盤となるインフラや制度が次々と整備された 。政府は「富国強兵」や「殖産興業」といった政策を推進し、工場、兵舎、鉄道駅舎などの建設を奨励した。また、廃藩置県や憲法制定といった統治制度の変更に伴い、官庁舎や裁判所、監獄などが建設され、教育制度の導入は学校や博物館の整備を促した 。 西洋化の影響は日常生活にも深く浸透した。住宅様式においては、外国人居留地を起点に西洋館が普及し、やがて庶民の住宅にも椅子式の生活スタイルが段階的に浸透した 。食文化においても、仏教の影響で長らく禁じられていた肉食が解禁され、西洋列強との競争意識から日本人の体格向上と体力増強が期待された 。洋食は都市部の富裕層を中心に広まり、カレーライスやオムライス、ハヤシライスといった日本独自の洋食が定着した 。大正ロマン期(1912-1926年)には、西洋文化と日本独自の文化が融合し、「モガ」や「モボ」と呼ばれる若者たちが洋装に身を包み、カフェで音楽や映画を楽しむ「自由でおしゃれな空気」が醸成された 。経済面では、明治後期から軽工業が発展し、日露戦争前後には鉄鋼や船舶などの重工業が急速に発展し、日本の近代化を加速させた 。第一次世界大戦期には工業生産が飛躍的に増大し、輸出が輸入を上回る好景気を享受した 。 『それから』(1909年発表)は、夏目漱石の「前期三部作」の二作目にあたり、急速な近代化が進む日本を背景に、個人の欲望と社会規範の...
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