2022年5月18日水曜日
漱石論の私信(応答)
お便りを有り難う。
ご依頼のあった<漱石における女性の客体化>について、少し考えてみたので、添付ファイルにさせてもらいました。
確かに「客体化」ではないのかと問われればそうであるには違いなく、また過剰な自意識に苛まれる漱石的存在にとって、女性との「距離」は大きな意味を持つものですが、その究極、意味するところが「自意識からの逃走」かと尋ねられれば、やはり少し異なっているようにも思いました。
むしろ、漱石テクストにおける<女性>なるものは、苦悩を孕みながらも自己を確認する拠り所として求められ続けていたように思われますし、またそのような女性との関係性は、即、客体化であるとは断じ難く、結果的に客体化は免れなくとも、まずはその他者性に慄き、畏怖と渇望の対象として女性の他者性を求めるところからドラマは始まっている、とでも表現すれば良いでしょうか。
そのようなことを、『それから』は前期の究極の作品でもあり、添付ファイルでは、そこへ至る道程から始めて記してみました。
前回、お送りした代助の「自然」は代助(の内面世界)に即した論じ方をしているので、今回、代助に対する相対化を含んだ作品テクストの大枠から俯瞰的に見ての記述とは齟齬しているように見えるかもしれませんが、(「女性」問題を含めた)大枠から見た『それから』は、今のところ、私にとってはこんな感じ、です。少し長くなっており、申し訳ありません。
前回、今回と、私にとっては誠に良い勉強となりましたが、あくまで私見ですので、ご参考程度に。
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