2022年3月10日木曜日
危機の二十年
EHカーが執筆した「危機の二十年」は、1920年代のいわゆる戦間期を扱ったものだが、金本位制を背景とした戦間期の理想主義、国際協調主義が、世界恐慌によって崩れ、第二次世界大戦に突入したように、今回のロシアによるウクライナ侵攻は、市場型間接金融を背景としたグローバリゼーションからの脱却、そして新たな国家主義世界への嚆矢となる可能性もあるだろう。ジャック・アタリ氏が指摘したとされるが、ロシアは人口のイスラム化、および極東における中国化が進んでおり、ロシア「民族」としての一体性に訴求する動機が、NATOに対する脅威と同等かそれ以上にあるようだ。第一次大戦の火種となったバルカン半島は、相変わらず民族と宗教の坩堝であり、西欧の強国でも、極右政党の台頭など、民族主義・国家主義の機運が高まっている。グローバリゼーションによって、すべての人が平等に市場にアクセスし、富の分配に与れるはずだったが、実際には経済的格差が拡大した。経済的格差の歪みは、むしろ民族的ナショナリズムや、国家主義を招来する。世界が再び大戦争の惨禍に陥らないためには、謙虚に歴史に学ぶ姿勢が必要とされるだろう。
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妄想卒論その7 (再掲)
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カール・シュミットは、かなりラディカルな理論家で、ワイマール共和国に対する痛烈な批判という形で理論を構築したんだけど、現代の日本人が想像するような「政治」というのは、政治ではないと論じる。 端的に、戦争という「例外状態」において、民主主義の本質が現れる、と論じた。 と、まあ後はマカマサ先生の本でも読んでいただくとして、でも、原理的にそういう側面は確かにあるよね、と思いつつ、現実の政治は多元的な政治団体の利害調整の場だったり、まずは当選しないことには話にならない政治家としての宿命が産み出した利権構造だったりってのも、無視できないよね、てのはある。 ただ、国家と社会が互いに浸透しあって、国家の本質が見えずらくなってるのも、現代日本社会の特質とも言えるだろう。 そういう時に、カール・シュミットの、友・敵理論、つまり、政治的(あるいは文化的)多元主義なんていう生ぬるい観念はかなぐり棄てて、国家が生きるか死ぬかのある種の限界状態においてこそ、国家、あるいは民主主義の本質が現れる、という理屈は、閉塞感ただよう現代日本において、響くものがある。
返信削除人間は人間を赦し得る、と言いながら、カール・シュミットの友・敵理論を紹介するのは矛盾するように見えるけど、山岡先生が強調するのは、カール・シュミットにおいては、結合の強度の問題で、それは敵の存在によって強くはなるものの、問題はどこまでも(結合の)強度の問題で、敵のことを嫌いだとか好きだとか、経済的な利害関係の問題ではない、と仰っていました。 それどころか、カール・シュミットは、私仇と公敵を区別し、公敵は尊敬さえもしなければならない、と論じているそうです。 その含意は、世界から完全に敵対関係が無くなることはあり得ない、むしろ、無理に無くそうとすれば、新たな暴力を生む、ということでした。
返信削除トランプ政治がアメリカを分断した!ヤバイ!みたいなことがよく言われるけど、カール・シュミットに言わせれば、分断こそが政治だ、ということになるかも知れない。 なぜなら、カール・シュミットによれば、友・敵をはっきりさせるところに、民主主義、あるいは「政治的なるもの」の本質があるのだから。 日本みたいに、とにかく水面下で根回しして利害調整ばっかりやってるような国は、結局なんの「決断」も出来ないし、アメリカに守られていながら、人口問題に伴う社会保障費の増大を漫然と放置して経済的に自滅する、ということになる。
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