2022年3月6日日曜日

社会不安防止としての経済学

賃金には下方硬直性があるから、不況時には政府が財政出動によって雇用を創出するべきだ、と唱えたのがケインズだが、働く人のうち4割が非正規で、賃金が最低水準まで切り下げられる状況では、政府の財政出動も、一時的なカンフル剤にしかならず、雇用を創出する役目を果たせるだろうか?仮に一時的に効果があったにせよ、非正規労働者は相変わらず不安定な地位に留め置かれるだけではないのか? ケインズ経済学が非難されたのは、雇用を創出するという美名の下で、政府の過剰な財政出動が正当化されて、政府債務が肥大化したからだと思われるが、雇用が大幅に流動化した現在でも、財政出動が大規模に行われている現状がある。 経営学者のドラッカーも、ナチズムの惨禍の経験から、企業が雇用を守ることが、人々の不安心理を和らげ、社会を安定化させる、と説いた。 ケインズ経済学は非効率でムダに規模の大きな政府を作る、と批判されてきたが、雇用の流動化と、労働分配率の低い日本の現状では、むしろ雇用を確保するほうが大事なのではないか。 雇用の確保も、立派な人権だろう。フランスはそれほどの経済大国ではないが、労働分配率の高さでは群を抜いている。それでも、世界に影響を与えるような哲学者を多数輩出している。 日本はカネのことばかり考えすぎなのではないか?もっと大事なことがあるだろう。

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